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三百円
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あの時はもう感情が爆発しそうで、公園のベンチで寝泊りしてもいい、だからここから逃げ出したいっ!
と思い詰めていた。
そして琴音は感情の赴くまま後先を考えず財布に入っていた全財産の三百円すべて使い切って切符を買って、勢いそのままに電車に乗った。
それでも三百円の距離はかなりなもので知り合いがいないところまでは来られた、
と自負はしている。
下車した駅は、駅名は知っていたが琴音が今まで足を踏み入れたことがない駅だった。
ただここまでは良かった。
現実より感情が勝っていたから。
初めての駅に降り立った瞬間、現実が勝った。
財布を開けると中身はゼロ。
財布を逆さまにしてもチャリーンともいわない。
公園での寝泊りが現実味を増してきて、琴音は急に不安が襲ってきた。
所持金はゼロということは何も買えないということ。
それは飲まず食わずを意味する。
春とはいえまだ肌寒い。
何も飲まず食わずでいたら、いずれ凍死か栄養失調で死んでしまうのは目に見えている。
(…。……死んだら、お父さんとお母さんに逢えるかも……)
両親に逢えるなら凍死でも栄養失調で死んでもいいか、
という考えが一瞬だけでも浮かんでしまって慌てて首を振る。
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