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スィエロ
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琴音は店内に入る前にもう一度ちゃんと張り紙の内容を見ることにする。
(住み込み可、で喜んじゃったけど……。……ちゃんと内容を見ておかないとな!社員とバイトの募集か…。よし!バイトの面接で受けよう!)
きっと住み込みということは、ここで働いている人達と小さな部屋で川の字で寝るということだろう。
それは今の琴音にはとっては物凄く有り難いことだが、この店に長く留まる気はない。
(……ここの店には自分に対して同情する人はいない…。それだけでも救いだからな…)
できるだけ早く一人になりたい。
一人になりたいからすべて投げ出して逃げてきた。
ある程度お金が貯まったら、どこか安いアパートでも借りて一人になれる場所を作るのが琴音の予定だ。
(‥数ヶ月後にはやっと一人になれるんだ…)
やっと一人になれる空間ができる……。
そう思うだけで琴音の心が軽くなる。
琴音がゆっくりと視線を上げて、店を見上げるとカタカナで、
『ケーキ工房 スィエロ』
と店名が書かれていた看板が掲げられていた。
この店は駅前にある小さなケーキ屋だった。
白だけを基調としたシンプルな店構えが印象的だ。
店の前には特大のデティベアが椅子に座って、今日のおすすめケーキと書かれた看板を持って、出迎えてくれている。
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