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Ⅱ
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酷くだるい時間が終わって、放課後。
俺は担任の先生に呼び出された。俺の様子がおかしい、と。
部活動をする生徒の声が聞こえてくる、俺と先生以外誰もいないこの教室で。
俺は外を見ながら言った。
「先生には、分からないですよ」
先生は勿論、「言ってみなきゃ分からない」なんてお決まりのセリフを言った。先生は俺がオメガだってことを知っている。ヒートも来ていないオメガなんか俺くらいで、よく様子を見られているのは知っていた。
でも、この事には関わってほしくなかった。先生にどうにか出来るはずがないんだから。
「じゃあ俺の運命の人が死んでたんですけど、先生にどうにか出来ますか?」
生意気な口をきいたとは思う。でも、これが俺の本心だった。
先生は明らかに狼狽えていた。こんな事、一度もないと研究員の人も言っていた。
「し、志賀。落ち込むな、きっとまた」
「運命に、二度目ってあるんですか?」
また別の「運命の相手」が現れる。先生はそう言いたかったんだろう。でも、俺は聞きたくなかった。
あの人以外の「運命」なんて、考えられなかった。
俺の問いに、また先生は口を閉ざした。何と答えていいか分からないといった顔だ。
当然だろ、俺だって分からないんだから。
「俺は大丈夫です。それだけなんで」
俺は立ち上がって教室から出ようとした。先生はまだ何か迷っているような顔をして俺に手を伸ばしていたけれど、俺は見えてないふりをして「失礼しました」と教室を出た。
先生との会話より、織部の遺したディスクを聞いていたかった。
荷物を取って、校門を出て。家へ帰る足が速くなる。いつの間にか全力疾走していて、家の前に着いた時には酸素不足どころかゼロになったんじゃないかと思う位にくらくらした。
制服を脱いでテレビの前に座る。②と書かれたディスクを入れて再生した。
「今日はとても寒いね。風邪引いてない?」
嘘だろ、こんなに暑いのに。液晶越しの織部は本当に寒いらしく、長袖だった。
見てるだけで暑いはずが、織部を見てると本当に寒くなってきたような気がした。
「今日も学校、楽しかった?君の学校に行ってみたいなあ」
今日も、退屈だった。あんたが来れるのなら、いつでも来ればいいのに。ああ、でもあんた人気だもんな。女子達に囲まれてるとか、有り得そう。
――――そんな日は、もう絶対に来ないけど。
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