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Ⅲ
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俺の様子を見ながら、保健室の先生は言った。
「志賀くん、だっけ。じゃあ、初めてのヒートか」
「そう、です」
「たまに遅い人もいるんだけどね、滅多にいないんだよ。大体「運命の相手」に会ったら初めてのヒートを迎えるから」
その言葉を聞いて、俺のヒートが何故遅かったのかが分かった。だって、俺の「運命」はもうこの世にいない。
俺のヒートが遅れた理由は、俺に織部静がいない事実を改めて実感させた。
「君の相手は?」
「……いません」
「いない?」
「死に、ました。数年前、事故で」
俺の言葉に、先生は驚いていた。それからあの日の担任の先生のように何と言っていいのか言葉を探していた。
俺はその様子をただ見ていた。体が熱い。苦しい。誰か、早く鎮めてくれ……!
「織部……」
小さく呟いた織部の名を、先生はしっかりと聞き取っていた。先生は保健室に鍵をかけて、俺にゆっくりと近付いてきた。
「織部?数年前に死んだ、あの?」
「……ッ」
「彼が相手?なら、最初から手が届かなかったんだ。彼は芸能人で、君は一般人。危険だよ」
先生の様子がおかしい。気付いた時には、俺は先生の腕でベッドに固定されていた。
「私ならどうかな?私はアルファで、君はオメガ。私なら次の「運命」になれる」
「先生……、どうかしてる!」
「どうかしてる?私は正気だよ」
どうにかして抜け出そうとしても、ヒートの最中だからなのか力が入らない。
先生はアルファだと言った。俺のフェロモンにあてられてるんだ。
そこまで考えたけれど、考えてる間にも先生は動く。それはまるで獣のように。
このまま先生と番になる?――――嫌だ。俺の相手は、織部だ。織部静以外、俺は認めない。
「織部!!」
俺は必死に織部の名前を呼んだ。ガチャ、と鍵が回る音がして担任の先生と一木が入って来た。
「これは……、志賀!無事か!?」
「ちょ、せんせー!これはないっしょ!?」
一木と担任が、俺の上に覆いかぶさっていた先生を引きはがした。先生はやっぱり正気じゃなかったようで、担任が外に連れ出した。
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