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Ⅲ
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「……志賀」
「一木……」
一木は泣きそうなのを必死に堪える俺を見て、ちょっと困ったように笑った。
「織部って聞こえた。志賀の大事な人?」
「……ん」
「そっか。いつか会いたいなー」
いつものようなのんきな声で、一木は言った。それは一生、叶わないことだけど。
余計に泣きそうになる俺に、一木は錠剤を渡した。
「オメガ用の抑制剤。俺、こー見えてもアルファじゃん?オメガとヤッて子供出来たらまずいからさ」
「……ありがと」
錠剤をもらって口に入れる。薬特有の苦さを感じて思わず顔をしかめそうになる。
一木は笑って俺の水筒を差し出した。苦味が緩和されてようやく落ち着いた。
すぐに、とはいかないが、さっきよりは熱が引いたような気がした。
「すげえ薬」
「だろ?俺も飲んでんだ。アルファ用の。薬ってスゲーよなぁ」
「アルファ用の薬?」
「オメガのフェロモンにあてられねーようにってさ。俺、まだ「運命の相手」と番になってねーもん。若すぎるんだと」
あー。まだ高校生だもんな。そう言って笑うと、一木はいつものように笑った。
「高校卒業したら番になるって約束なんだ。それまで、俺は毎日薬を飲んでるんだけど」
一木はそこで、真剣な顔になった。いつもつるんでた俺でも見た事ねえような顔だった。
「それ効かねえかも、と思うくらい。お前のフェロモン、やばかった」
「……マジかよ」
「マジだよ。せんせーが襲うのも分かるなーってくらい。あんなマスクでどうにか出来るもんじゃねーよ」
「うっわ、最悪……」
死んだ織部と番になることは出来ない。じゃあ、俺は死ぬまで薬を飲むことになるんだろう。
織部が俺を生涯愛していると言ったように、俺も織部を愛してると決めたのだから。
「志賀、この学校のアルファは俺やせんせーだけじゃねえんだからな」
「分かってるよ。……この薬本当にいいな」
「だろー。お前ももらえば?」
「そうする」
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