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Ⅲ
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親に迎えに来てもらって帰宅して。親はヒートが来た事に複雑な顔をしていたけど、やっと俺にも運命が現れたんだと喜んでいた。
親の喜んでいる顔を見ると、その相手が既に死んでいるなんて言えなかった。
部屋に籠って、ディスクの中から⑪を入れて再生する。すぐに織部の顔が映った。
織部は相変わらず幸せそうに俺に語りかけてきた。
「今日はどうだった?今日も君が幸せだったらいいな」
織部……。俺は泣いてしまった。一木の前では我慢していたけれど、織部の前では無理だった。
織部、今日……俺、ヒートになったよ。あんたがいないのに、どうやって鎮めりゃいいんだ。
泣いている俺には構わずに、織部はいつものように優しく語りかけて来るんだろう。
そう思っていた。
「でもね、何故か分からないけれど」
織部の顔が歪むのが見えた。俺は泣くのを止めて織部の顔を見つめた。
「今日は、君が泣いているような気がしたんだ」
――――その通りだ。俺は驚いて目を見開いた。どうして、織部がそんな事を。今。
織部は俺に優しく囁きかけた。
「外れていたらいいんだけど。もし、君が泣いていたとしても大丈夫だよ。君に何かあったとしても私が傍にいる。私と君は「運命の相手」なんだからね」
織部――……。
どうして、織部は欲しい言葉が分かるんだろう。もう、この世にはいないのに。どうして、織部はすぐ傍で見ているかのように分かるんだろう。
「私に言ってごらん、いつでも聞いてあげるから。私に出来る事があるなら何でもしてあげるよ」
織部が差し出す手を掴みたくなる。でも、いつも液晶に阻まれる。
あんたのその綺麗な手には、触れない。あんたに聞いてもらうことは出来ない。
嘘吐きだよな、あんた。何でもしてあげるって、今のあんたには何も出来ないじゃないか。
その時、薬が切れたのか熱がまた戻ってきた。熱い……、苦しい。
織部、助けてくれよ……織部……!
「君は、どんな声をしているのだろうね」
「ひっ」
織部の声に反応して、俺は体を震わせた。画面の向こうの織部は俺の欲なんか知らないで笑っている。
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