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Ⅳ
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最悪な最初のヒートから一か月。
俺は予想外に気遣われながら学校生活を送っていた。
俺の次の運命になれる、と迫ってきた先生も冷静になって「とんでもない事をした」と謝った。
ヒートのせいだから、仕方ない。俺は勿論許した。
高校三年の時期は、受験勉強で忙しい。大学に入って、将来の為に勉強しなくちゃならない。
俺のようなオメガは就職が大変だ。ヒートで周りも巻き込んで、一週間も休むような人材を雇いたくないと思うのは当たり前なんだから。
だから知識が必要だ。どこへ行っても「必要」とされる存在にならなければ。
「志賀ぁ」
「何だよ一木」
一木が雑誌を持って俺に近付いてきた。お前はこんな忙しい時期に何を持って来てんだ。
模試もたくさんあるから、その対策もしなきゃならんだろうに。
一木は俺の前の席に座ると、俺に向かって真面目な顔で聞いた。
「なあ、もしかして。お前の運命って、この人?」
一木が指で示した先には、織部にそっくりな男がいた。
織部が……生きてる。死んだはずの織部が、まだ俺と同じ世界で生きているような錯覚を覚えた。
「誰だよ、これ」
「織部。織部薫っての。今話題の俳優だってさ」
雑誌には「織部の再来か!?」なんて書いてあった。――――似てる。織部に、似てる。
一木から雑誌を貸してもらって中身を読む。織部薫は、織部の弟だった。
織部とは4歳ほど違うらしいが、どう見ても映像の中で俺に笑う織部と同じだった。
「で、この人?」
一木の声に、ハッと現実に引き戻される。俺は何を考えて……。織部は死んだ。
俺の運命はもうこの世にいないんだ。
「違う」
「え、でも織部って珍しいっしょ?そう多くないと思うけど」
「……俺の相手は、その兄だ」
「え」
一木が固まった。俺を見て目を丸くして。それから困ったような顔になった。
「ごめん……。それって、織部静だよな」
「うん」
「じゃあ、俺……会えないな」
「だな」
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