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Ⅳ
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今日も退屈な一日を終えて、俺はバイトへ行こうとしていた。
「待てよ志賀ぁ~、置いてくなって!」
「お前が遅いのが悪い」
そう言いながらバイト先の書店に向かっていると、綺麗な黒い車が一台俺達の前で止まった。
一木と俺はその車を見て「心当たりあるか?」「いや?」と小声で会話した。
「志賀、雪人くんかな?」
車の中から声が聞こえると同時に、窓が開いた。俺の呼吸が止まるかと思った。
姿は織部だった。液晶の向こうから出て来たかのように織部がそこにいた。
「……そーいうあんたは、織部薫サン?」
一木が俺の前に立っていつものように笑って聞いた。
織部薫と聞いて、やはり織部ではなかったと落胆する。あの弟か。
「そうだよ。兄さんの運命の相手を一目見てみたくてね」
運命の相手は本人にしか知らされない。なのに、何故織部薫が俺の事を知っているんだろう。
俺が軽く混乱していると、織部薫はおかしそうに笑った。
「分かりやすいなあ。僕が何故君の事を知ってるか知りたそうな顔をしてる」
「……実際、そう思ってます」
俺の言葉にまた織部薫は笑った。笑い顔は織部とそっくりだが、声が違う。織部の方が、もっと低い。
「僕が頼み込んだんだ。最後まで会えなかった兄さんの運命の相手が現れたって聞いたから。
君、結構肌白いね。兄さんが生きてたら、きっと君の事を大事にしたんだろうな」
「……今でも、大事にされてると思います」
じゃなきゃ、あんなディスク……俺の為に遺したりなんかしない。そう思いながら言うと、織部薫はきょとんとしていた。ディスクの事を知らないらしかった。
「へえ……?それはどうして?会った事もないのに?」
「……あの人は、俺宛てにディスクを遺してたんで」
「ディスク?」
「ビデオレター……っぽいの」
「え、そんなの聞いてないよ」
織部薫が驚いて俺の肩をガシッと掴んだ。そしてそのまま強く揺らしてきた。
「そのディスク、見せて」
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