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Ⅳ
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本当に家まで送られて、とうとう家の中にまで上げてしまった。
バイトだと言ったのにもう帰って来た俺に母さんが驚いて玄関に来てしまった。
そして……織部薫を見てテンション上がりまくりの母さんが「運命」だと勘違いして家に上げたのだ。
俺の「運命」は織部静ただ一人だと言うのに。
「はぁ」
「そんなにため息を吐くと幸せが逃げるよ」
「誰のせいだよ」
俺は織部薫を自室に通し、紙袋の中から今日見ようと思っていたディスクを取り出した。
⑮と書かれたディスクをパソコンに読み込ませる。
しばらくすると、織部の姿がいつものように画面に映った。
「やあ、今日は楽しかったかな?」
相変わらず、俺への織部の言葉は優しい。その優しい声が俺を癒してくれる気がした。
織部薫の唾を飲み込む音が聞こえた気がした。
「このビデオも随分増えてしまったね。ディスクが20を超えるまでには君に会えるといいな」
「にい、さん……」
織部薫の声が震えていた。声に気付いてそっちを見ると、織部薫は泣いていた。
だよな、弟なんだし。死んだはずの兄貴の姿を見たら、そりゃ泣くか。
そう考えると何だか織部薫が可哀想に思えてきた。
「今日はCMの撮影があったんだよ。君にも見てもらえるといいな」
これなんだけど、と説明する織部に「ああ、楽しそうだな」と思った。
そのCMなら見た事がある。ワックスのCMだが、織部が画面の向こうに甘く語りかけるようなシーンがあって俺はとてもドキドキした覚えがある。
「君の事を考えながら演じてみたんだ」
その言葉にドキッとした。俺を、考えて……?じゃあ、あの甘い言葉は、俺に?
顔が一気に熱くなる。何やってんだ俺、織部薫もいるのに。
「……兄さんは、君を本当に愛してたんだね」
織部薫は画面の向こうの織部から目を離さずに言った。
子供のように無邪気な笑顔で俺に語りかける織部を見て、コイツは何を思ったんだろう。
「君は、兄さんが好きかな?」
「好きです」
俺は戸惑いなく答えた。だって、織部が一生俺だけを愛すると誓ってくれたから。
織部薫はそれを聞いて安心したように笑った。
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