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Ⅳ
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「ごめん、本当は君の事を疑っていたんだ」
ビデオを見終わった頃、涙を拭いながら織部薫は言った。
「だろうと思った」
「え?」
「普通そうだろ。死んだ後に運命が出て来るなんて、信じられない」
俺の言葉に、織部薫は「そうだね」と答えた。下を向いて、何かを思い出すような顔をしていた。
「信じられなかった。兄さんがずっと探していたのに、君は現れやしなかったから」
「生まれる順番はどうにもならねえよ。カミサマじゃねえんだから」
「そうだね」
それから少し、俺も織部薫も何も喋らなかった。その沈黙が何だか心地よかった。
しばらくして織部薫が口を開いた。
「志賀くん、兄さんの代わりに次の「運命」が現れるまで君を支えたい。駄目かな?」
一瞬心臓の音が耳の奥で大きく響いたような気がした。
織部の代わりに、織部薫が俺を支える?どういう意味だ。
「どういう……支えるって」
「例えば、君のヒートを抑える薬を僕が調達する。あの薬は少し高いからね」
他にも俺の「運命」のふりをして次を探すのを協力する、とか
マスコミとかに追われないよう、織部の「運命」だと気付かれないようにするとか
どうしても抑えきれないヒートを、織部薫が治めてやると言われた。
「いらねえ」
俺は心底嫌な顔でそう答えた。嫌いだって言ったはずなのに。
何でこの男はそんな提案が出来るんだ。
「どうして?」
「薬で抑えきれないヒートは自分で何とかする。それ以外は、まあ……助かるけど」
「なら、その事以外は支えさせてほしい。兄さんもそれを望むはずだ」
織部の事を引き合いに出されて、俺は迷ってしまった。
そして織部が望むなら、と俺はそれを受け入れた。
「これから僕の事は薫と呼んでほしいな」
「……なら、あんたも好きに呼べよ」
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