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Ⅴ
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あれから薫は俺にべったりで世話をしてきた。いっそウザいと思うほどに。
おかげで俺の「運命」は完全に薫だと思われている。
勿論、俺と会っている時は変装しているのでまさか「織部薫」だとは思われていないが。
「志賀、また来てんのかな」
席替えがあって隣同士になった一木がこっそり声をかけてきた。一木の言葉に俺は溜息をついた。
薫は仕事がなければ俺を送迎するために高校に来ている。ほぼ毎日だ。
そんなところでアルファ様の有能さを思い知らなくてもよかったと思うのだが、とにかく薫は俺からあまり離れないようにしているようだった。
「やっぱり、織部薫は嫌い?」
「嫌いだよ」
訳が分からなくて、嫌いだって言ってるのに俺から離れようとしなくて。
織部の弟だからって言うのは分かるけど、ここまでべったりなのがアルファ様の気まぐれだって言うのならもう止めてほしい。
アイツがよく分からない。
授業終わりのチャイムが鳴る。掃除をやって、HRをやって。
放課後になってから黒いあの車が止まっているのを見る。また、来ているのか。
先生が俺の元へ歩いてくる。
「今日もいらっしゃっているから、応接室へ行くように」
その一言で、やっぱり薫が来ている事を知る。俺を逃がさない為に、あの男は高校で俺を待っているのだ。
教師を使い、俺を確実に捕える為に。
先生の言葉に従って応接室へと行こうと荷物を持つと一木が声をかけてきた。
「志賀、本当に嫌なら俺に言えよ。俺が何とかする」
「いい。いらない」
「でも」
「アルファ様の気まぐれに決まってる。すぐに飽きるよ、俺なんか。アイツにも「運命」がいるはずだし」
一木はまだ心配そうに俺を見ていたが、「バイト、店長に言っとく」と言って教室を出て行った。
そうだ、薫のせいで俺はしばらくバイトに行けていない。
「お疲れ様、雪人」
このさわやかな笑顔で微笑むアルファ様の気まぐれは、いつまで続くのやら。
「……またバイト行き損ねたんだけど」
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