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Ⅴ
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とあるマンションに連れてこられた俺は薫の後ろを歩いていた。薫しか、俺の知ってる場所への道順を知らない。薫に着いて行くしかなかった。
薫がチャイムを鳴らすと綺麗な男の人が部屋から出て来た。目を奪われて、逸らせなかった。
「珍しいね、薫。私の元に来るなんて」
「お前が兄さんの運命を見たいと言ったんだろう、智里(ちさと)。連れて来た」
薫はまた怖いほどの無表情を部屋の主に向けていた。そんな薫が怖くて、俺は薫から離れようとした。
「雪人、ごめん。そんなに怯えないで」
「へえ……、ゆきとっていうのか」
部屋の主は俺の方へと手を伸ばしてきた。薫がその手を叩き落す。
俺は驚いて薫と部屋の主とを交互に見ていることしか出来なかった。何だろう、この二人。
「酷いな、この子に触れる事すら許してもらえないの?」
「雪人が汚れる」
俺はひどく帰りたくなった。何でこんな事に巻き込まれているんだ?
ここまで仲の悪い「運命」を俺は初めて見た。俺の周りは全員それなりに幸せそうだったから。
「雪人、コイツが僕の……不本意ながら「運命の相手」」
「不本意ってのはないでしょ。初めまして、椎名智里(しいな ちさと)です。
私に対する態度を見れば分かると思うけど薫はオメガ嫌いでね」
薫がオメガ嫌いだと、俺はその時初めて知った。オメガ嫌いなのに、コイツは何で俺を支えようと思ったんだ?
どうしてここまで俺にべったりしてくる?訳が分からない。
「自分の「運命」にまでコレだから、珍しくオメガなのに好かれてるお兄さんの「運命」が見たかったってわけ」
「それだけじゃないだろう?父さんが雪人の事を疑ってお前に見て来いと言った、そうだよね?」
「正解」
俺は思ったより多くの人に疑われているらしい。まあ、そりゃ、そうか。
薫みたいに信じた方がおかしいんだ、俺だって微妙な所だし。
「で、君の名前は?」
椎名さんに言われて、ここまで俺は口を一度も開いていない事に気付いた。
薫の豹変についていけてなかったからだ。
「志賀……雪人、です。雪に、人って書いて、雪人」
「へえ、だからこんなに肌白いのかなあ」
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