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Ⅴ
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「お前と雪人を一緒にするな、その手を離せ」
薫が椎名さんの手をまた払おうとしていた。椎名さんは薫を睨みつけて、俺を抱きしめた。
「じゃあ、薫。お前にこういう事が出来るの?無理だろう、お前はオメガが嫌いなんだから。雪人くんはまだ子供なんだよ、私とお前のやり取りを見て怯えていたんだ。安心するために、人の温もりが必要だったんだ。
それに、雪人くんが欲しいのはお前じゃない。織部静、お兄さんだよ」
椎名さんの温もりは何だか安心した。体の震えがだんだんと止まってくる。
同じオメガだから、なんだろうか。そう、欲しいのは織部だけだ。
「雪人……」
「お兄さんの代わりにこの子を支えたいのは分かるよ、薫。でも、それにしては距離が近すぎる。私に会わせたのだって、まるでお前がこの子の運命だとでも言っているかのようだ。お前に、この子のプライベートまで立ち入る権利はない」
薫は椎名さんの言葉にすごくイラついた顔をしていた。無表情にそれが加わって尚更怖い。
しばらく二人が睨み合って、薫が舌打ちをした。
「距離が近かったのは認める。雪人は僕が嫌いだと言い放った初めてのオメガだからね」
「お前が嫌い?すごいね、その無駄な美貌はオメガどころかベータまで誑し込んでるのに」
「お前とは違ってな」
「残念ながら、私はお前に惹かれてるからね。腐っても「運命」かな」
本当に嫌いだと言われた事がなかったのか。そして、俺に構っていた理由がやっぱり興味本位だと知ってアルファ様の気まぐれかよ、と呆れた。
この気まぐれがいつまで続くのやら。
「さて、親御さんが心配するだろうからこの子連れて帰ってあげなよ。今日はごめんね、散々だったでしょ」
「…………いえ」
椎名さんは俺の頭をわしゃわしゃと撫でてくれた。薫よりも椎名さんの方がいい。
ここまでは遠いけれど、もう一度会えたらいいなと俺は思った。
「雪人に触るな。雪人、後で消毒するよ」
「だから、お前触れないでしょ。こういう事できないくせに」
薫は鼻で笑って俺の頬にキスをした。椎名さんが目を見開いた。
「これくらいなら出来る。後は慣れればいい話だ」
「驚いた……てか呆れた。ほどほどに。さっきも言ったけど、お前の運命は私だから」
「分かってる、嫌と言う程な」
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