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Ⅵ(Case by K)
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雪人がトイレに行っている隙に、智里が話しかけてきた。
「……で、何であの子連れてきたの。私何も言ってないけど?」
「分からない」
僕は素直にそう答えた。何度考えても、僕にはその理由が分からなかった。
ただ、僕の事を無視してまであの本を……兄さんが好きだった本を読む雪人にイラついて。
気が付いたら、智里が会いたがってるなんて嘘を吐いていた。
「ふーん……。で、まだ距離近いみたいだね。離れろって言ったっしょ?」
「お前に関係ないだろ」
「あるよ。私が誰の運命だと思ってる?何度も嫌だと言いながら、結局薫も私も絶縁する事が出来なかったじゃん。検査でも結果が出た。私とお前が運命だと」
そう、あの検査。あの検査で当時学校一と言っていいほど犬猿の仲だった僕と智里は、「運命の相手」という到底認められない関係になったのだ。
絶対にコイツだけは、と思っていた相手と番になるなんて考えられない。
それでも、僕は。「運命」に抗う事が出来なかった。
「……嫌と言うほど知ってる」
「何だかんだでヤる事ヤッてるしねえ」
「うるさい、雪人にそれを聞かせるなよ」
「あの子に聞かせる訳ないでしょ。「運命」がこの世に居ない子に」
一度だけ、智里は僕に弱音を吐いた事がある。それはヒートが酷く、薬でも治まらなかった時だ。
犬猿の仲だというのに僕に手を伸ばして「薫が欲しい」と懇願した。
普段の智里なら絶対にありえない。いまだに「初夜の時どっちが先に煽られたか」にこだわって番になっていないのだから。
ちなみに僕は絶対に認めない。僕から言い出せば、汚らわしい「オメガ」に屈したアルファだと言う事になる。そんなのは認めない。
……その智里が、懇願するほどだ。ヒートがどんなに恐ろしいものか僕と智里は知っている。僕には智里がいて、智里には僕がいたからどうにかなった。
だが、もし。あの時僕がいなかったら。智里は僕の知る「最悪なオメガ」に成り下がっていただろう。僕が相手だからこそ、智里は僕に体を委ねた。僕が智里の「運命」だから。
「薫。雪人くんから手を引きな、これが最後だ。後はお前が戻れなくなるよ。お前がどんなに拒否しようと、私の「運命」はお前なんだから」
智里の忠告の意味は分かっている。僕がどこかで雪人に恋をしているんじゃないかと疑っているんだ。もし、立場が逆だったとしたら僕だって智里を疑うだろう。
「運命を振り切って恋をするのは無理だね。お前で証明されてる」
「女癖悪いもんねー。あーあ、可哀想な女性達に刺されないといいけど」
「誰がそんなへまをするか」
「お前ならやりかねないからね」
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