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Ⅶ
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「あの、さ」
さっきから気まずくて沈黙してた所に、一木が口を開いた。
「ヒート、来ないってのはやっぱおかしくないか?」
「……そう、だろうか」
「検査してもらうとか、病院行った方が」
確かに、ヒートが来ないのはオメガとしてはおかしい事だ。ただ遅れている、というには日が経ちすぎている。
ヒートなんて来ない方がいいが、病気なら困る。
「今度行ってみる」
「今度じゃなくて、今行こうぜ」
「はあ?」
一木が俺の手を引っ張って歩き出した。いつになく一木が強引で、俺は「待て」とか「止まれ」とか言ったけど聞いてはくれなかった。
「せんせーい」
大きな病院の中で、一木はまっすぐに進んでいった。戸惑う俺を余所に、一木は自分の主治医を見つけ出して声をかけていた。
「あれ、一木くん?どうしたの?」
「せんせー、今日は俺じゃなくてコイツを診てくれない?」
「ん?」
俺を覗き込んだ、どこか幼い顔の一木の主治医はまるで子供のように微笑んで挨拶をした。
何だこの先生、一木によく似てる。
「こんにちは、初めまして。私は一木くんの主治医で荻(おぎ)と言います」
「初めまして……」
「荻せんせー、今日外来?」
挨拶もそこそこに、一木は聞いた。荻先生はそんな一木に笑って言った。
空気読まない一木によく笑いかけられるな……、大抵イライラするってのに。
「うん、今日は外来だね。二番診察室においで、今日は患者が少ないから」
「だと思った。狙ってきたんだよねー」
「私もそう思ったよ」
「さっすがせんせー!じゃ、二番ね」
一木は面食らって真っ白になってる俺の手をまた強引に引っ張って二番診察室へと向かった。
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