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Ⅶ
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二番診察室に突っ込まれ、一木はそのまま病室を出て行った。
落ち着かなくて早く出たいと思っていると荻先生が入って来た。
「君の名前は?」
「……志賀雪人です」
パソコンにカタカタと名前が打ち込まれる。カルテを作られているようだ。
「一木くんとはどんな関係かな?」
「友達、です」
「そっか、それで彼が連れてきたんだね。今日はどうしたの?」
俺は少し言うべきかどうか迷った。そして深呼吸した後に荻先生に伝える事にした。
「俺はオメガなんですが、大体四か月前に最初のヒートが来てからずっとないんです」
「……ヒートが、ない?」
荻先生は驚いた後、ちょっと難しそうな顔をした。俺は素直に頷いた。
「失礼だけど、君の番は?」
「いません。もうどこにも」
「いない?……まさか君……」
いきなり荻先生は席を立って「ココで待ってて」と言った後、診察室を出て何処かへ行ってしまった。
「まさか」と言った。俺の名前は、多分。政府の研究機関では有名だろう。「運命の相手が死亡しているオメガ」なんだから。
それは病院にまで伝わっているのかもしれない。
数分して荻先生は戻ってきた。
「もう一度名前を確認するよ。君は、志賀雪人くんで間違いないね?」
「はい」
「君の番は……もしかして、死亡してる?」
「はい」
荻先生は手元に持っているファイルを見ながら俺の言葉を確認していた。
それから先生は俺にいくつか質問をした。
番がいないことをどう思っているか、生活が変わった事はないか、精神的に限界を感じていないか。
全てに答え終わった時、荻先生は震えて俺を見つめていた。
顔も青ざめて、なんだか泣きそうな顔だ。
どうして先生がそんな顔をするんだろう……。
織部の事故は仕方ない事だ。誰にも、どうする事も出来ないんだから。
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