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Ⅶ
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次の、運命。
帰宅して、ベッドの上に横になると俺はぼんやりと考えた。
俺の運命は「織部静」一人だ。次の、なんてあるはずがない。
「今日も一日お疲れ様」
何となく織部の顔が見たくなって、俺は久しぶりにディスクを再生させた。
織部は相変わらず画面の向こうで俺の為に笑っていた。
「今日は私も疲れちゃってね」
「珍しいな、あんたにしては」
思わずそう呟いて笑うと、織部は苦笑しながら写真を見せた。
写っていたのは幼い織部と薫だった。薫が笑って織部に抱きついている。本当に仲が良かったんだな、と俺は思った。
「私には薫っていう弟がいてね。……オメガが嫌いなんだ。ちょっと昔色々あってね」
薫は本当にオメガ嫌いだったのか。織部が口にして、改めて驚いた。
俺にはずっと付き纏って、そんな風には到底見えなかったのに。
「でも、君に会えば薫も変わると思ってるよ。私と薫は良く似てるから、君の事を気に入ると思う」
薫の事を心配している織部は良いお兄さんなんだなと思う。でも、少しだけ。俺は薫に嫉妬した。
このディスクを作っている時くらい、俺の事だけ考えてくれればいいのにと。
「私と君は多分会えば仲良くやれると思うけど、薫はそうもいかなくてね」
「知ってる。薫は今も椎名さんと仲悪いよ、織部」
椎名さんと薫を思い出して溜息をついた。
同じタイミングで液晶の向こうの織部も溜息を吐いていた。
「っと、いけない。薫の話ばかりしているね。ああ、そうだ。私には宝物があってね」
織部はそう言って、人差し指に嵌ったシルバーリングを見せた。
そのシルバーリングはレースみたいな細かい模様がついていて、真ん中に小さな青い石がついていた。
「これは私が幼い頃母に貰った物なんだ。母は私が中学の時に亡くなってしまったから、形見の品なんだよ。きっと、私はこのディスクと共に君にこの指輪を渡すだろうね。その時が楽しみだよ」
指輪。ディスクと共に、渡す……?俺は紙袋の中を必死に探した。
織部のお母さんの指輪。――――ない。どんなに探しても、紙袋の中に指輪はなかった。
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