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Ⅷ
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センター試験も近付いて冬休みに入った頃、俺は勉強に集中できずにいた。あの指輪がどこに行ってしまったのか知りたい。
だけど、その指輪を誰かが持っているのだったら。何と言って貰えばいいのだろうか。
そもそも手放してくれるのだろうか。
ぐるぐると考えながらシャーペンを動かしているとケータイが鳴った。
「メールか」
メールボックスを開いてみると、椎名さんからメールが届いていた。
いつもの「薫はまた迷惑かけていないか」みたいな心配メールかと思ったが、なんだか違うようだ。
ただ、今日は会いたいと言ってきた。しかも、薫と一緒には来るなと言っている。
俺は薫の車でしか椎名さんの家まで行った事がない。
自慢じゃないが、俺は土地勘というものがない。知らない場所ではよく道に迷う。
どうしようかと考えていると、一木から着信が入った。
「志賀ぁー、今日お前暇?ぜんっぜん勉強分からなくて~」
「お前はもう少し自分で努力しろよ……」
相変わらずの一木に脱力した。アルファと言うのに、本当にどこか抜けている。
本当にアルファなのかと疑うよなと笑っていたら、笑い声が一木の方にも伝わってしまったらしく拗ねていた。
「いや、……一木、ちょっと相談なんだけどさ」
「何?」
「二つ先の町、お前分かるっけ?」
「あー、そこならいけるわ。時々親父が連れて行くから」
一木なら分かりそうだな、と俺は一木に椎名さんの家までの案内を頼むことにした。
事情を説明すると、一木はいつになく低い声で「分かった」と答えた。
「なあ、志賀」
「ん?」
「お前、薫さんとその……椎名さんに関わりすぎじゃね?」
「……え?」
俺は昔から人との間に一線を引いてきた。それは、俺がオメガだと薄々感じていたからだ。
だからこそ距離感をうまくつかめなかったのだろう。
一木に言われるまで気付かなかった。
薫とは織部の兄弟なだけ。
椎名さんとは薫の「運命」なだけ。
他人と、ほぼ変わりないじゃないか。
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