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Ⅷ
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「もう少し距離置かねえと誤解されるぞ」
「……悪い、一木。気付かなかった」
薫とは「運命」のフリしてるからとか、椎名さんには俺の「運命」が分かっているからとか、そんなのはただの言い訳だ。
俺は薫の家族に既に疑われている。距離が近すぎた証拠だ。ただでさえオメガは色々と言われる立場なのだから……もう少し慎重にならなくては。
オメガに「次」はない。何か失態をすれば「やはりオメガだから」と言われてしまう。
そんなのは御免だ。
「ま、とりあえず行ってみますか」
「だな」
俺は一木との通話を切った後、椎名さんに「友達と行っていいですか?」と聞いた。
椎名さんの答えは「いいよ」だった。一木と合流した後、バスを使って椎名さんの家へと向かった。
チャイムを鳴らすと、椎名さんが出て来た。
「こんにちは、雪人くん」
「こんにちは、椎名さん。こっちが友人の一木です」
「志賀の友達の一木って言います」
丁寧に挨拶をする一木に椎名さんは笑って迎え入れてくれた。
椎名さんは俺達にお茶を出した後、薫が来てないか確認してきた。
「薫は?」
「今日は何も……」
「そう」
よく見れば、椎名さんは震えているように見えた。どうしたんだろうか。
だけど、椎名さんはいつも通り笑って本題に入った。
「薫抜きで、君に会いたかったのはね」
椎名さんは小さな真っ黒い箱を俺に差し出した。
いきなりの事で困惑する俺に、「あけてみて」と椎名さんは言った。
言われるままに開けてみて俺は息を呑んだ。
青い、宝石。銀色の装飾。
――――間違いない、織部の指輪だ。
「君に、渡さなきゃいけないと思ってね」
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