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Ⅸ
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「志賀くん、久しぶりだね。今日は合格発表かな」
「え、あ、はい……」
雑談を始める岡本さんに、俺は「今の人達を知っているんですか」とは聞けなかった。
何故だか、聞いてはいけないような気がした。
「どうだった?」
「受かって、ました」
「おめでとう!じゃあ今日はお祝いかな」
岡本さんがそう言って俺の頭をくしゃくしゃと撫でた。
子ども扱いされてるな、と思わないでもなかったけれど……なんだかとても落ち着いた。
「だと、思います。まだ親には何も言っていないので」
「どうして?仕事?」
「いえ……後からでいいかなと」
「駄目だよ。親御さんが一番気にかけているからね。今すぐにでも教えてあげないと」
ほら、早く。そう急かされて、ケータイから親に電話した。
母さんが出て、「おめでとう!あらやだ、すぐにご馳走の用意しなくちゃ!何がいい?」と思った通りのハイテンションで返してきた。
「いつも通りでいいよ」
「駄目よ。雪人のお祝いなんだから、ちゃんとやらなきゃ!」
「……分かった。楽しみにしてる」
そう言って切る。きっと今頃、母さんは張り切って料理をしている事だろう。
通話が終わったことに気付いた岡本さんが俺に優しく聞いた。
「親御さん、喜んでた?」
「すごく。……テンション高すぎです」
「高くもなるよ。大事な息子の合格が決まったんだからね。……そうだ」
岡本さんは俺に「着いておいで」と言った。
どこに行くんだろう?と思いながら俺は岡本さんの後ろを歩いた。
「私からのお祝いがまだだからね。ちょうどいいと思って」
「え?」
岡本さんは俺を車に乗せた。そしてそのまま、20分ほどした所で降りた。
そこは墓場だった。俺は何となく感じた。この場所は――――。
気付いたら走り出していた。強く惹かれる、その場所に。
あんたが、きっとそこにいる。俺を待ってるような気がして。
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