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結局答えの出ないまま、卒業式になった。もらったばかりの卒業証書を片手にまだ咲かない桜を見上げる。
「志賀。これでお別れってか。さみしいなー」
「死ぬわけじゃねえんだし、いつかまた会うだろ」
「冷めてんなー……。ちょっとは寂しいとかないのかよ」
「ねえよ」
俺は笑って卒業証書で一木の頭を叩いた。ポカッといい音がした。
一木は頭を押さえて「いってえええええ」とかほざいてる。
「お前、どうせ連絡してくるからな。冬休みの間、俺に勉強教えてもらおうと延々電話してきた事……根に持ってるからな」
「げっ、志賀の恨みってこれだから怖いんだよ!」
「なら少しは自分で努力しろ!」
「無理ぃ~」
二人で笑いあって、これもしばらくないのかと思うと少し感傷的になった。
寂しいとは言わない、絶対に。
一木が落ち着いたのか、俺の目をまっすぐに見つめて言った。
「志賀、織部薫とあの椎名、だっけ。アイツらには気を付けろよ」
「分かってる。お前こそ、自分で勉強しろよ。俺はもう手助けしてやれねーからな」
「急いで志賀みたいな友達作らなきゃな」
肩をすくめる一木におかしくなって笑う。それと同時に、不安があった。
薫に嫌な予感がしていた。最近、薫が俺と会っていない。
仕事が忙しいのかと思ったが、一週間に一回は会おうとする薫だ。さすがに変だと思う。
アルファ様の気まぐれがやっと終わった、とは思えない。「自分の所に来い」と言っておいてそれはないだろう。
「本当に困ったら、俺に言えよ」
「おう」
一木に随分心配をかけてしまった。他の友人達とも別れを惜しんでいると、校門の外に車が見えた。その車に目を見開く。
――――薫だ。何故、薫がここに来る!?
「あら、もう来ちゃったのね」
「母さん……!?」
俺が驚いて母さんを見ると、母さんは涙ぐんで俺を見ていた。
父さんも何だか寂しそうな顔をしながら言った。
「卒業とともに、家を出るとはな。これも自立の為だ、これからは「運命の相手」と仲良くな」
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