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いきなりの事に俺は頭がついていけなかった。
どういうことだ、何で俺が家を出る事になってる?一体何が起こっているんだ?
「どういう……!」
「あら、いいのよ。知ってるから」
母さん達に知ってる事を聞こうとすると、母さんも父さんも微笑ましそうに俺を見て言った。
「薫さんに聞いたわ。卒業と一緒に自立して大人になる為に家を出るって」
「家を出て、薫さんの所に行くんだろう?」
薫……!アイツが、全部仕組んだのか!
俺がどんな答えを出そうと、アイツは俺を自分の家に連れて行くつもりだったってわけだ。
父さんと母さんにも本当の「運命の相手」を教えてないことを知ってて――――!
そこまでして、何で俺なんかにこだわるんだよ。アイツは!!
「引っ越しも終わったみたいね。仕事が早いわあ」
「それから迎えに来たみたいだな」
むちゃくちゃだ。アルファだからって、ここまで許されていいのか……!?
湧き上がる怒りを抑えて、俺は父さんと母さんに聞いた。
「……俺の部屋、どうなってる?」
「え?荷物もないわよ。全部薫さんの家にあるんじゃないかしら」
その一言に、俺は自分の家なのにもう居場所がなくなってしまった事を実感した。
母さんと父さんに薫が「運命の相手」だと言っている以上、もう何も言えない。
俺が言いそうなことを本当に考えて言ってやがる……!
ここで否定しても、ここまで用意周到に、ご丁寧に外堀を埋めてきた薫なら次の策ってのがあるだろう。
俺に逃げ場はない。腹が立つ。
車の方へと他の人の目を気にしながら向かう。
「卒業おめでとう、雪人」
車に乗り込んだ俺に、笑顔まで浮かべて薫が言った。
俺は腹が立って仕方なかった。
「おかげさまで。最悪な卒業式だ」
「何で?」
「俺はまだ答えを出していない。父さんと母さんを騙してよくもこんな……!」
「その御両親に僕を「運命の相手」と言っている以上、君は僕の所に来ると思ってたけど何か違った?」
その余裕めいた顔が腹立って仕方なかった。薫の言う事は間違っていない。
高校卒業後、大抵相手の決まったオメガ、アルファは相手の所へいく。何もおかしくはない。
本当に俺と薫が「運命の相手」であったなら、だが。
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