アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ⅩⅠ
-
ぐるぐると、ずっと俺は薫の事を考えていた。
何で、あんなことを。自分の兄の運命の相手にこんな事するかよ、普通。
……それもだけど、薫が可笑しい。やっぱり俺の知らない顔を……。
いや、何を考えてるんだよ。たった半年の付き合いで全て知っている訳ないだろ。
椎名さんじゃねえんだから。
椎名さんの事を思い出した時、俺の指に嵌った銀色が目に留まった。
織部が、母の形見だと言っていた大事な指輪。
俺は……俺は、織部の「運命の相手」だ。薫との距離を、俺は間違えているんじゃないのか。
あれだけ一木に言われていたのに。俺は、間違う訳にはいかないのに。
「志賀~」
色々悩んでいると、大学の友達が俺に声をかけた。コイツは一木によく似ている。
今もノートを写したいと言ってきた。また寝てたんだな。あれだけ言ったのに。
仕方ないな、と俺もノートを見たが真っ白だった。薫の事を考えすぎたみたいだな。
「珍しいな、志賀が真っ白とか」
「うわっ、俺志賀を頼りにしてたのにいいいいい!!」
「ちょっとは自分でノート取れよ……」
友達と笑っていると、次の予鈴が聞こえてきた。
俺はこの後講義を一つも取ってなかったから荷物をまとめた。
友達が慌てて次の準備をする。
「遅刻だな」
「怒られるわ!!どうしよ」
「走れ!小学校じゃねえんだから怒られねえって」
騒がしい友達を見送って大学を出た。春も過ぎて夏になろうとしている景色を見ながら歩く。
……薫がいないなら、今日はディスクをゆっくり見れるな。
ぼんやりとした考えを壊すように俺の目の前で車が止まった。……いつか、同じことがあったような。
どっか高級そうな黒塗りの車から、男が降りてきた。
「こんにちは。初めまして」
「……こんにちは」
男が挨拶をしてきたので挨拶を返す。そして、いつでも逃げられるように身構えた。
警戒する俺に気付いた男が、無表情で俺を見下ろして言った。
「織部静と織部薫の父です」
「…………織部、の?」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
48 / 73