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「お疑いは、ごもっともですね」
深い溜息を吐いて、織部の親父が頭を抱えた。……よく見りゃ、この人何か疲れてないか……?
ロケ帰りの薫の表情によく似ていた。疲れて、顔色が悪くて。
……そりゃ、アルファの家だし。織部の家は俺の家よりゃ裕福だし。苦労もそれなりにあると思うけど。
俺が何となく心配になっていると、俺の考えとは別の事を織部の親父は言った。
「結果的に、同じような事を言いますから。……薫から、今すぐお逃げなさい。あの子は、私の知る息子ではない」
「は?」
薫から、逃げる?意味が解らなかった。俺(オメガ)がアルファを惑わすとか言って遠ざけられるのは覚悟していたが。
訳が分からないままの俺を置き去りに、織部の親父が話を進めた。
「オメガ嫌いなあの子が、オメガの貴方を気にかけているのは良い事だと思います。ですが、あの子は貴方との距離を見誤り始めている」
「……俺が、じゃなく?」
「ええ、アルファの私に対する態度を見れば分かります。貴方は運命以外に簡単に靡くオメガではない。私の妻に、そっくりですよ」
ちょっと待て。俺は脳内でストップをかけた。織部の事を話している間、俺を見ながら時々すげえおかしそうに笑ってたのは奥さんに……織部のおふくろに似てたからかよ。
何か……複雑だ……。
じゃなくて。現実逃避している場合じゃない。
織部の親父は、薫に異常な何かを感じてる。
親父として、家族として。ずっと見てきたから、何か感じたんだと思う。
俺だって心当たりが無い訳じゃない。でも、
「……俺には、分かりません。薫の事を、何も知らないので」
「そうですね……。まだ一年も経っていませんから。しかし、危ないと思ったら逃げてください」
織部の親父が、念押しする。俺はただ、「はい」と答えるしかなかった。
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