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どうしていいのか分からない。座るのも躊躇っていると、中学生らしい男子がさっきのおっさんと入ってきた。
「先生、これが息子です。遼、お前の家庭教師だ」
遼(りょう)と呼ばれた男子は俺を見上げて、「オメガ?」と言った。
俺は体が強ばるのが分かった。その物言いは嫌いだった。
オメガが心底、「劣等種」なのだと実感させられるから。
「オメガの家庭教師って珍しいね!すご、本当にオメガって姉さん以外にいるんだー」
「あ、え……は?」
でも、さすが色々とおかしい家の息子だった。軽蔑の目が来るかと思えば、凄く歓迎された。
「遼です、よろしくお願いします!」
「あ……」
戸惑って動けないでいると、彼がきょとんとして言った。
「先生、いい匂いするね。姉さんと違うや」
「……その、よく分からないけど、嗅覚が敏感なんだな……」
彼はやはりアルファらしい。恐らく、俺(他のオメガ)のフェロモンを匂いとして嗅ぎとったんだろう。
俺の戸惑いに気付いたオッサンが「先生のお名前を伺っても?」と誘導してくれた。
「志賀雪人です。遼くん、でいいか?」
「はい!」
「あまり教えるのに慣れてないから、厳しくなるかもしれない。でも、こちらも努力するから」
「大丈夫です」
遼は笑った。厳しくなる、と言ったのに。
あの一木ですら、たまに嫌がって逃げだした。テスト間近だろうがと怒って引きずり戻したが。
「志賀の鬼ィー!!」と何度叫ばれたことか。
「厳しいのは当たり前なんで!」
「努力家なんだな」
そうして、最初の授業が始まった。
彼は基礎はしっかりしていたが、応用が出来ないだけだった。一木ほど悪くない。
「本を読んでみるといい。今度読んだ本を一冊、俺に紹介してくれ」
「分かりました……」
やはり、読書が苦手なようだ。ほぼほぼ、言葉に惑わされているからな。
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