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Three 先生はすごい人
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家庭教師はよくいた。気が付いたら付けられていた、が正しいんだと思う。
僕はアルファだから、皆から「よく出来る」のが当たり前だと思われてると父さんは言った。
「けどな、遼。お父さんはもっとすごい人を知ってる」
父さんはよくそう言っていた。父さんはアルファで、母さんはオメガだった。父さんの言う「すごい人」はオメガのことだった。
姉さんもオメガだけど、すごいとはあんまり思わなかった。
「どこが?」
「確かにオメガは、よくベータよりも出来ない人達だと言われている。でもな、オメガはアルファに負けないように努力をする人達だ」
「努力……」
父さんは、オメガの人達は働きにくいと言っていた。皆がオメガを下だと思っているから。でも、本当はアルファよりも上なんだって。
……姉さんは頭そんなに良くないし、運動も出来ないよ……?
僕はちょっと疑いながら、アルファらしくなるために家庭教師から勉強を教えてもらっていた。
今までの家庭教師は皆、「教科書」しかやらなかった。何かの問題集とか教科書とか持って来て、それを解いておしまい。
つまらないし、僕が本当に知りたい事は教えてくれなかった。
算数につまずいた時もそうだった。「答えが違うから」と正しいやり方しか言わなかった。
僕は、どこでどう間違っているのか知りたかったのに。アルファだから自分で分かるだろうと誰もが言った。
そんな時に先生が来た。学校にもほとんどいないと思うオメガの先生だった。
姉さんや母さん以外にオメガだと分かっている人を見た事が無かった僕は、ついはしゃいでしまった。先生が困ってるのを見て、やりすぎたと反省した。
「本を読んでみるといい。今度読んだ本を一冊、俺に紹介してくれ」
先生は僕にそう言った。僕はうっと詰まってしまった。……本は好きじゃない。僕にとっては、外でサッカーする方が好きだった。
先生も問題集を解いて終わりかあと思いながらも、本を一冊読んでみる。やる気は出なかった。
次の家庭教師の日、先生は最初に「どんな本を読んだ?」と聞いてきた。問題はやらないのかなと思いながら、適当に言おうと思ったら。
「そうだな、時間も無いから気になったところだけを教えてほしい」
先生の言葉に今度こそ固まった。何と言っていいのか分からない。だって、先生はこの本読んだ事あるか分からないからどこまで紹介した方がいいのか分からない。ついでにそこまで読んでない。
「先生……」
「しまった、って顔をしたな」
先生は困ったように笑って、僕の頭をポンポンと軽く叩いた。先生が言うには、本の紹介をすると「本当に大事な所だけを伝えようとする」ので、問題文に惑わされなくなるらしい。
「長い文の問題が苦手だろう?後、応用問題。引っかけが多い所で必ず引っかかる」
その練習に、本の紹介が一番いい。そう言った先生を、僕は心の底からすごいなあと尊敬した。
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