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悪夢を連れて来た
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水を飲み干した後、若干ボーっとしたままの頭で考えた。
薫がここに居るのが、普通に考えておかしい。一週間だと言ってたが、まだ今は六日目だ。予定より早すぎる。
「薫、仕事は終わったのかよ」
「終わったよ。で、帰って来てみれば誰かさんのうめき声が聞こえるし、倒れてるし。死ぬかと思った」
「そりゃスミマセンデシター」
軽口叩いてみたが、頭がボーっとしたまま戻って来ない。
あ、ダメだコレ。あっつい。そう思って薫を見上げると、薫はいつもとは違う笑顔を浮かべていた。
「薫?」
「何か薬は飲んだ?」
「あー……。抑制剤なら」
「どうせ僕が居ないから一気に飲んだんでしょ」
違和感を感じて呼んでみたが、すぐに話題を切り替えられた。何となく、俺を避けているような感じもするけど。
ぼんやりする頭じゃ何も考えられない。
「シャワーでも浴びておいで、匂いが付いてると気になるだろうし」
「んー」
重い体を何とか動かして、着替えを取って来る。浴室に向かって服を脱いだが、服が肌に当たって擦られると変な感じがした。
これに覚えがある気がするけど、それより暑い。早く涼みたい。
「んっ」
冷水を体に浴びたからか、ぞくっと寒気と震えが走った。
風邪じゃない。……無理に忘れようとしてた、見ない振りをしていた。
ヒート。俺の大嫌いな、発情期と言う名の悪夢。
しかも最悪な事に、近くに薫がいる。俺という「オメガ」を支配するアルファが。
「うっ、ん……」
ビクビクと勝手に震える体に、声だけは押さえようとする。
ここから出たら、部屋にこもる。絶対に、薫と「その一線」だけは越えちゃいけない。明らかな間違いだ。
ヒートの俺は、何もかもがぶっ飛んでる。だから嫌いなんだ。
何も分からなくなってしまったら、俺が今までやって来た事が崩れ去る。
何をしても「劣等種(オメガ)」の評価がついて回る。
「雪人~、また吐いてない?大丈夫?」
織部とは違う声、織部とは違う口調、織部とは違う呼び方。
俺の名前を知る前に、あの人は死んだんだ。俺の名前なんて、呼ぶはずが無い。
「ンン~~~~ッ」
なのに。
必死に口を押えたのに、俺の高い声が風呂中に響く。
俺の体は、アルファに飢えていた。渇いた体が薫というアルファを求めている。
頭が、馬鹿になっていく。
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