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ーーー〝喜べ人間。今からお前を抱いてやる。〟
あんなことを言われたのだ。
だからそれなりに触られる覚悟はしていたがやはり無理だった。
口を濯ぎたい気持ちで一杯になりながら心の中で悪態を吐く。
(クソ、、また男にキスされた、、、しかも舌まで入れやがって、、、。)
俺は昔、酒に酔ったクソ親父に女と間違われてキスをされた事がある。
あの時は、全ての力を拳に込めておもいっきりぶん殴ってやった。
はじめてのキスがクソ親父だなんて思いたくなくて、次にキスした相手がはじめての相手だと、クソ親父との事は無かった事にして記憶から消していたというのに、これじゃもう台無しだ。
悲しいやら情けないやら、男ばかりに好かれる自分。もう半ば諦めに似た気持ちになりながら俺は目の前の美しい男を見つめた。
蘇芳は、静さん、渚さん、蘭さんの手で見違えるほど艶やかに変わった俺の髪を何度も何度も、その長くて綺麗な指で梳いていく。
感触を楽しむように指先に巻き付けたり、指の間に挟んで撫でたり、いったい何が楽しいんだと思いながら俺はもしや今が話し合いのチャンスなのではないかと口を開いた。
「あの、、、。」
「、、、、。」
結構勇気を出したというのに、蘇芳は俺の言葉をガン無視し、自身とは色も形も違う俺の耳を長い指先で挟んだり、窪みの一つ一つを確かめるように撫でたりしていて、少しましになっていたゾワゾワと背筋を這う男への嫌悪感が蘇ってきた。
嫌悪に加え無視された怒りからイラついた俺はキッと目を釣り上げ怒鳴るように声を上げる。
「あのっ!!!」
近くで怒鳴る俺に流石に無視できなくなったのか、蘇芳は耳から手を離さないままチラリと俺に視線を合わせた。
「うるさい、聞こえている。」
眉根を寄せめんどくさいそうそう言う姿に俺の苛立ちがつのる。
「聞こえてるなら返事ぐらいしたらいいだろっ!!」
「何だ、、ぎゃあぎゃあとうるさい奴だな、、、。」
「なっ!?誰のせいでっ、、!!チッ、、もういい。」
俺は今だに耳を触り続けている手を怒りに任せパシリと払い落とした。
蘇芳はまるで俺をキャンキャンうるさく吠える犬を見るような目で見ていた。
自分でも酷くイラついているのがわかる。
自分は喧嘩っぱやいほうだと自覚しているが、ここまでになる事はなかなか無い。
きっとこの訳の分からない状況や、仕方がないとはいえ男に触られている事、そして、目の前にいる人の話を聞きやしない男の所為で心に余裕がないからなのだろう。
俺はもう怒りに任せ蘇芳の海のような色をした美しい瞳をキッと睨みつけながら言う。
「えっと!王様!さっきも言いましたが俺は貴方に抱かれたくありません!!ついでに言うと食われるのも御免です!!俺ができる雑用なら何でもするんで陸地に帰してくださいっ!!」
「、、駄目だ。」
「ーーッ!?」
俺の言葉を聞いた蘇芳は眉根を寄せ、ほとんど間を空けずに一言そう言った。
そう簡単に受け入れてもらえるとは思っていなかったが、こうもすぐに拒否されると言葉がでない。
反応出来ずに固まる俺の頬を手の甲でサラリと一撫でしながら蘇芳は事も無げに言う。
「この俺の国に流れ着いた時点でお前はもう俺の物だ。お前が何と言おうと関係無い。俺はお前を気に入った、だから抱く、それだけだ、、。それに、安心しろ。今のところお前を食うつもりはない。大人しく抱かれていればそれなりの扱いはしてやる。」
さも当然のように言ってのけた目の前の男を俺は信じられない物でも見るような目で見つめた。
なんて傲慢で嫌な奴なんだ。
言われた言葉を理解した後ジワジワと湧き上がる怒りに俺の体はフルフルと震える。
王様って奴は皆んなこうなのだろうか。
確かに俺の言い方も悪かったとは思う。だが、男として
、こんな屈辱的な言葉があるだろうか。
「、、、、冗談じゃない。」
小さいが確かに聞こえる声でボソリとそう呟く。
それに対し蘇芳は「、、、何?」っと怪訝そうに片眉をあげた。
そんな蘇芳に俺は腹の中に溜まっていた物を一気にブチまける。
「お前はもう俺の物?大人しく抱かれてりゃそれなりの扱いしてやる?ふざけんじゃねぇっ!!俺はアンタの物じゃなんかじゃねぇ!!!もっと言やぁ人魚でもなけりゃ、この国の住人でもねぇ!俺にとってアンタはあの黄色や紫の奴と一緒だ。いくら王様だって言われたって敬う気持ちにもならなきゃ、アンタの言葉に従う義理もねぇっ!!」
「、、、、、、。」
怒鳴り声をあげる俺を見ながら蘇芳は徐々に眉間にシワを寄せていく。
「俺はばあちゃんの為に死ぬ覚悟をしてこの海に飛び込んだんだっ!!でも幸か不幸か生きのびたからもう少し人生ってやつの続きを知りたかった!でもそれが男に抱かれ、いつ殺されるのかと怯えながら物の様に扱われる人生なら、そんなん今潔く死んだ方がマシだ!!わかったらさっさと食うなり殺すなりしやがれ!!この顔だけの変態クソ魚がっ!!」
いい終わり興奮から荒く息をする俺を見下ろす蘇芳のこめかみ辺りがピクリと動いた。
しかし、それどころじゃない俺は蘇芳を睨みつける事で一杯一杯でその事に気がつかなかった。
「、、、、お前の言いたい事はよくわかった。」
そう言って蘇芳は自分の髪に手を伸ばし、ボソボソと何かを呟いた後、その髪を引っ張った。
すると、その蘇芳の髪の一部が金色に輝いてシュルリと音を立てながら赤色をした紐へと変わっていき、蘇芳の手の中に収まった。
俺は目の前で何が起きたのかわからなくて、ただただその紐を凝視する。
そんな俺を見て蘇芳は馬鹿にした様に鼻で笑うと、その紐を使い手で拘束していた俺の腕を縛りはじめた。
「っ!!?何すんだっ!!?」
気づいて抵抗した時には既に遅く、俺の腕は綺麗な赤色の紐で一纏めにされていた。ご丁寧に形の良い蝶々結び付きで。
俺はキッと蘇芳を睨みつける。しかし、蘇芳は何とも余裕そうな笑みを浮かべ言う。
「今見たとおり、この紐は魔力のある俺の髪で作った。どんなに抵抗しても、千切れも解けもしないよう呪いがかけてある。俺が自ら解かない限り何をしても外れる事はない。引きちぎるの事はおろか、刃物で切ることもできない。だから無駄な事はするなよ?ただ腕を痛めるだけだからな。」
「なっ!!!??」
俺は信じられない気持ちで紐を見つめた。
それもそのはず。腕に緩めに巻かれたその紐は太さ1センチにも満たない細い物で、頑張れば引きちぎれそうだし、刃物なんてひとたまりもなさそうな繊細な見た目をしていたからだ。
(こんなのが!?嘘だろ??)
グッと腕を左右に力一杯引っ張ってみるが紐はただ肉に食い込んで赤い痕が残るだけだった。ならばと、腕を口元に持ってきて蝶々結びの端の部分を咥え引っ張ってみる。しかし、それもビクともせずにその綺麗な形を保っていた。
俺の心にザワリと焦りが生まれる。
(なんて事しやがる!!このままじゃ本当にっ、、、!!そんなのごめんだっ!!)
蘇芳は腕を縛った事で気が緩んだのか俺から手を離している。
しかし、体はまだのしかかられているままで俺は額に冷や汗をかきながらどうしようと必死に頭を回転させた。
しかし、こんな短時間でいい考えなんて浮かぶはずもなく、、、。
こちらを見下ろす蘇芳の大きな手が俺の顎を掴む。
薄暗い部屋の中でもわかるその鮮やかな青緑の瞳が俺をジッと見下ろした。
「お前の言いたい事はよくわかった、、、。だが、お前がいくら喚き散らそうと俺はお前を抱く。誰が殺してなんかやるものか。お前が俺に媚びるようになるまでじっくり抱き潰してやるからな。」
「ーーーッ!!!」
「フッ、、、優しくしてやってれば図に乗りやがって、、お前が俺を怒らせたんだ。覚悟しろよ。」
そう言ってニィっと口元を歪めて笑った蘇芳。しかしその瞳は笑ってなんておらずギラギラと怒りにもえていた。そして俺は呆気なく蘇芳にもう一度唇を奪われた。
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