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冬の夜
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チャラ男×真面目リーマン
「…ただいま」
ドアを開けると、ふわりと玉子の柔らかい香りがする。それから、アイツの香水の匂い。
「あーっ!深雪さんおかえりっ!」
キッチンからひょこっと顔だけ覗かせた、金髪でピアスの同居人。
「ああ、ただいま仁瀬」
そのまま自室に引っ込んで重い鞄をデスクに置くと、彼は決まって後ろから抱きついてくる。
コートを脱いだ冷たい肌には、仁瀬の体温がありがたい。
「深雪さん、違う」
「っ、……知らない」
こんなに寒いのに、顔に血液が集まってくる。きっと、俺の顔はいま真っ赤だ。
「呼んでくれないの?みーゆき?」
一緒に住み始めて4ヶ月。
仁瀬は、折角だから名前で呼び合おうというおかしなルールを作った。
「……、り…」
「…り?なに?」
「……り、りょうや」
鞄から出しかけた資料を握りしめて、小さな声で言った。
仁、……亮矢は、俺より高い位置にある頭を俺の肩にグリグリ押し付けてくる。
「あー…可愛い。マジ癒し」
そう言う亮矢からは、亮矢の匂いと混じって大好きな玉子スープの香りがする。
少し前まで、コンプレックスの塊だった『可愛い』という言葉。
小さい鼻に口、長いまつ毛と白い肌。生まれ持って女性のような顔立ちは、性格や声と一致しない。身長だって、170に届かない。
社会人になってもそれは変わらず、寧ろギャップは激しくなって俺を苦しめた。
そんな中で男に襲われ、何もかも傷付けられた直後に出会ったのが、こいつ。仁瀬亮矢。
耳だけでなく、舌や身体にもピアスを開けて、髪は馬鹿みたいに明るく染めた亮矢は、初対面にも関わらず俺を介抱してくれた。
それから、いろいろあって、こうなって、今ではとても大事な人。
『可愛い』という言葉も、亮矢から貰えば誇りに変わる。
まあそんなこと、言ってやらないけど。
「深雪さん、ご飯食べる?お風呂?それともおr…ゴフッ」
「飯食う」
「うぃっす」
チャラ男のくせに優しくて、料理(俺が仕込んだ)が出来て、笑顔が綺麗で。
やっぱり大事な人。
「飯が美味かったらお前って言ってやるよ」
「……っ!?深雪さん今なんて!?」
「…さぁな。早く食わせろ」
愛してるよ亮矢。
なんて、絶対に言わない。
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