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The wing which died surely turns into love
ぼやける記憶と繋がる現状 < Side Y
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怠い身体に、薄く開いた瞳。
瞳の先で、俺の寝ているベッドの端に、腰を掛けている男。
ベッドに横たわったままに、俺は、きょろきょろと周りを見回した。
くるりと見回す風景は、どう見ても自分の部屋だ。
ベッドの端に座っていた男は、俺に被さるように、四つん這いの体制になる。
目の前に見えた顔に、覚えがない。
「え? は?…おまっ、誰?!」
男から逃げようと、ベッドを這い上がろうとした身体が、ギシギシと軋んだ。
さらに、やたらに……、身体がスースーする。
「ぇ? ……は?」
思わず、布団の中を覗く俺。
半端ない尻の違和感と、自分がパンツ1枚の格好であるコトに気づき、愕然とする。
俺は、激しく瞳を瞬く。
「俺のコト、わかんないの? 」
俺の顔の両側に手をつき、真上から見据える男は、くすくすと可笑しそうに笑う。
上手く動かない身体に、男の手が、ベッドと俺の首裏の間に入り込んだ。
ん………? あぁ……。
ふわりと触れられたうなじ。
瞬間に、ぽつぽつとした記憶の点が、線で繋がった気がした。
「佳梛(かな)……か」
朝羽佳梛(あさば かな)…俺の高校からの友人だった。
昔の記憶が、頭の中に再生される。
初めてあった時、俺は、佳梛の名前に首を傾げた。
「なんて読むんだ?」
俺の声に、佳梛は苦い顔をした。
「″よしなぎ″…って呼ばせたいけど、″かな″って言うんだよねぇ~」
はぁっと面倒そうに息を吐いた佳梛は、諦めたような表情を浮かべる。
「女だったらカナ、男だったらヨシナギにしようと思ってたんだって。なのに、酔っぱらって届け出した親父が、カナっ届けやがって……」
ぷくっと片方の頬を膨らませ、怒ってますというように、顔を顰めた。
「まだいいよ、お前。″よしなぎ″って読めなくもねぇじゃん。俺なんて、″ゆめ″だぞ? ……男に結芽はねぇよなぁ」
はぁっと大げさに溜め息を吐く俺に、佳梛は、ケラケラと笑った。
「お互い、親のセンス疑うよな」
ニッと、歯を見せる口許だけが、明確に脳裏に浮かんだ。
でも、記憶の中の佳梛の顔は、全体的にぼんやりとしていた。
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