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The wing which died surely turns into love
総ての根源である月香
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スーツ姿の凛とした立ち姿の月香に、俺は、眉根を寄せた。
幼馴染みだったのは、上に住んでいた頃……、それも、ずっと前の話だ。
月香は、今や、俺たちを裁く立場にいる者。
俺たちの将来は、生まれで8割が決まる。
生まれた瞬間に、呪力により、階級が決まる。
そこそこの呪力を持つ者は、努力次第で、さらに上の階級へと上がることが出来た。
しかし、俺のように底辺に近い存在は、その努力は徒労に終わる。
努力しようと自堕落に行きようと、さほど変わりはしないのだ。
報われる可能性の低い努力をするほど、俺は勤勉ではなかった。
月香は、生まれつき呪力が高かった。
だが、俺の前では、そんな素振りを見せなかった。
子供の頃は、なんの格差も感じ無かったが、大きくなるにつれ、俺たちの間には、埋められない距離が生じていた。
なんの努力もせずに育った俺と、勉学に励み上へと階級を上げていった月香。
月香の努力は、俺たちの間の溝を深くしていった。
苛立たしさを収めるように、大きく息を吐いた月香は、静かな声で言葉を紡ぐ。
「私は、あなたの監視役です」
月香は、着ていたスーツのジャケットを、徐に脱ぎ始めた。
―― ばさり。
風を巻き起こすような音を立て、広げられた月香の大きな翼に、俺の足の下に居る男は、悪い夢でも見て いるのだろうと、瞳をきつく閉じた。
広げられた翼に、月香のくすんだ茶色の髪が、金色へと変化する。
微かに差す日の光が、キラキラと反射した。
月香の着ているYシャツは、背の部分が大きく開いており、服を破くことなく翼を広げることが出来た。
「私たちは、こちらでは、何でも出来てしまう……。堕とされた者を、野放しにするわけにはいかないでしょ?」
呆れるように吐かれる月香の言葉に、心が重くなる。
俺は、罪人扱いなのだ。
「あなたの翼を封じたのも私。堕としたのも、私……です」
月香の顔が少しずつ歪んでいった。
幸い、見た目だけは、良かった俺。
そんな俺は、周りからは、繁殖材料として扱われていた。
のらりくらりと適当に生きていた俺を、こいつは難癖をつけ、地上へと堕としたのだ。
「……最期まで、面倒を見ますよ」
最後には、苦しそうに眉根を潜めながら、月香は笑顔を浮かべていた。
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