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The wing which died surely turns into love
月香の紡いだ言葉たち
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路地を抜けるタイミングで、結芽が俺の前に現れた。
「逃げられたのか?」
俺の顔を見た結芽が、嫌そうに顔を顰め、言葉を紡いだ。
いつの間にが、月香は、人混みに紛れ、姿を消していた。
「いや。ちゃんと絞めてといたよ」
にたっと笑う俺の顔に、結芽は、ぶるっと身体を震わせた。
「お前の笑顔、なんか怖ぇよな」
胡散臭いっていうか…と、笑う結芽に、俺は、不服気に拗ねて見せる。
2人で並び、歩き出してからも、面白くない俺は、結芽に絡む。
「失礼じゃない?」
そっか? と惚けるように声を零す結芽に、きゅっと唇を尖らせる俺。
「ごめんなさい、は?」
むっとした声を放ち、顔を覗き込む俺に、結芽は、けらけらと笑いながら言葉を紡ぐ。
「さーせん」
「全然、悪いと思ってないでしょー?」
ぼふぼふと結芽の脇腹に、軽く拳を打ち込みながら言う俺。
「腰痛ぇって、言ってんだろう」
俺の手を、ぱしりと撃ち落した結芽は、不機嫌そうに細めた瞳で俺を見やる。
「あはは、ごめん、ごめん」
謝罪の想いなど微塵もない言葉を吐き、結芽の腰にするりと腕を回し、抱き寄せた。
「だからって、つらっと腰抱くなっ」
腰に回した腕を剥がされ、キッと睨むような結芽の瞳に、俺は、両手を上げ、降参のポーズを取った。
「つーか、本当のコトだろう。無邪気さがないってかさ…、邪気の塊っぽいじゃん」
ニッと歯を見せ、笑う結芽に、とくんと心臓が鳴る。
瞬間、月香の言葉が、胸に凭れた。
″思った通りに出来なかったこと、ありますよね?″
その通りだった。
深く抉るつもりじゃないのに、思いの外、大きく消してしまったり。
見たいと思う記憶が、ぼんやりと霞みがかっているように見えたり…。
ちらちらと見え隠れする影のように、俺の頭に靄をかける。
″呪力の安定に欠ける″俺。
そんな俺の呪力で、記憶を操作されている結芽。
″力を使い過ぎるのは、貴方にも、相手にも負担だと言うことです″
結芽が壊れてしまったら。
…結芽が、どうなろうと関係ない。
ダメになったら、捨てれば良いのだ。
そう、思っていたはずなのに。
こうして、言葉を交わすことが出来なくなることが、怖いと感じる、俺が……、居る。
『呪力を使いすぎれば、朽ちるのも早くなる』
……俺が、居なくなったら、結芽は、悲しんでくれるだろうか。
でも、俺は、佳梛じゃない。
本物の、結芽の愛する者じゃない……。
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