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The wing which died surely turns into love
思い出せない記憶 < Side Y
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自分独りなら、適当に暮らしていけばいいと思っていた。
親の脛を齧る気は更々無く、振り込まれた金にも手は着けていなかった。
さすがに、休み過ぎ、金が底をつき始めていた。
でも、佳梛のためなら働ける……。
佳梛の為……。
そう、俺の世界は、佳梛を中心に回っている。
「ただいまぁ~」
間延びした声を放つ俺に、ちらりと瞳を向けた佳梛は、腰を上げた。
ふぅっと小さく息を吐いた佳梛は、俺から逸らせた視線に、軽く頭を振るった。
「俺、風呂入って寝るね」
バイトから家へ帰った俺と入れ替わるように、佳梛は浴室へと足を向けた。
「……そう」
残念に思う感情を隠すことなく声を放つ俺に、佳梛は振り向かない。
浴室へと向かう佳梛の後ろ姿を、ただ瞳で追っていた。
最近、セックスしてないな…。
……俺に、飽きた?
浮かんだ考えに、頭を振るい、気持ちを切り替えようと試みる。
ぼすっと腰を落とし、買ってきたビールを開けて、ごくごくと喉を動かした。
前は、あんなに、がっつくようにシていたのに…。
前…。数ヵ月前の記憶しかない。
あいつとは、ずっと前から一緒にいるはずなのに…。
頭の中が、なんだかモヤモヤする……。
佳梛が飽きたのかなど、俺にわかるわけなどない。
気持ち悪さに、頭を振るい、解決できない問題を追い出そうとしてみた。
独りでビールを飲んでいても、滅入るだけだと、腰を上げた。
佳梛を追うように、浴室へと足を向けた。
「俺も、入っていい?」
なんとなく無断で浴室の磨りガラスを開けることが躊躇われ、コツンとノックの音を立ててから、声を放った。
しゃがみ込んだ佳梛の身体に、ガタガタと慌てたような音が続いた。
再び立ち上がり、こちらを向いたような佳梛の姿に、ガガッと引っかかるような音を立て、浴室の扉が開いた。
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