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The wing which died surely turns into love
離れるべきなのは、気付いてる < Side X
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月香の言った通りだった……。
俺の呪力は、日に日に落ちている。
呪力を使わなくても、翼は、日に日に朽ちていった。
封印されていない翼の刺青が、肘ほどまで、短くなっていた。
刺青を見えないようにしたりする小さなコトでも、少しずつ、呪力は削られていく。
最初は感じなかった、翼が崩れ落ちていくような不快感も、身体を蝕んでいた。
翼が朽ちていく感覚は、呪力に蝕まれるのと同じような、嫌な感覚だった。
ぞわっとした寒気が、うなじを這っていった。
温めるように掌で触れたうなじは、妙に冷えていた。
どんどん、怖くなっていった。
俺の恐怖に連れるように、セックスの回数も、あからさまに減っていった。
安定しない俺の呪力で、結芽の記憶を弄ることが、怖かった。
セックスをして、昂った感覚に翼が広がり、結芽の記憶を弄るコトを避けたかった。
翼が体外へと出ないギリギリの線で、結芽を抱く。
結芽の記憶を操作しなくてもいいように。
浴室に入り、体外へと出した翼から大量の羽が抜け落ちる。
身体の中にあるうちは、形をなしていないので、抜けることはない。
でも、体外へと出した瞬間、抜けた羽が、ばらばらと床へと落ちていった。
「俺も、入っていい?」
コツンと鳴ったノックの音と、結芽の声に、慌て抜け落ちた羽を掻き集める。
見つかる前に、抜け落ちた羽を呪力で、塵ほどのサイズまで砕いた。
「なにしてんの? 髪でも抜けた? ハゲの危機?」
結芽の″抜けた″の言葉に、動揺してしまった。
俺の態度に、結芽は、申し訳なさげに謝罪の言葉を紡いだ。
俺の背に貼りついていた羽が、ふわりと舞い落ちた。
まずいと焦る俺に、結芽は羽を拾い上げ、深く追求することはしなかった。
ドクドクと緊張を伝えるように早まる鼓動に、結芽の前から消えたかった。
慌てるようにリビングへと足を向ける俺に、結芽が声を放つ。
「あれ? お前こんな刺青入れてたっけ?」
動揺に、背の刺青を消すことを忘れていた。
慌て、取り繕うように、言葉を紡ぐ。
「あー。何となく? カッコいいかなぁって…」
刺青だと思われているのなら、それでいい…。
これからは、消さなくていい分、楽になる。
これから……は。
今のうちに結芽の記憶を消し、姿を晦ませればいい。
今ならまだ、それくらい、出来るだろうか………。
月香に頼んでも、いい。
でも、…傍に、居たいと感じている。
リビングへと戻り、思わず、心臓の上で拳を握り締めた。
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