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The wing which died surely turns into love
気持ちなど関係ないクセに
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佳梛と過ごしていたアパートの前で、足を止めた。
ぼたぼたと降り注ぐ雨に、頭から足の先まで、ずぶ濡れになる。
それでも、俺は、動く気になれず、ぼんやりと空を仰ぐ。
「結芽……?」
震えるような佳梛の声が、耳に響いた。
ゆっくりと振り返った瞳に、心配そうに俺を見詰める佳梛の姿が映る。
「結芽、風邪引くよ…。中、入ろう?」
雨が滴る俺の手首を掴む佳梛に、それを荒く振り解いた。
じとっとした瞳を向ける俺に、佳梛は、きゅっと眉根を寄せた。
「風邪引くから…、帰ろう?」
困ったように、宥めるように言葉を紡ぐ佳梛。
胸の中が真っ黒なもので塗り潰されていく気がした。
「なんだよ…、何なんだよ!」
降り注ぐ雨の音に負けないほどの音量で放った言葉は、消化できない感情のままに、鳴り響く。
「ここは俺の家だっ、お前の帰る所じゃないだろっ」
キッと睨みつけるような瞳を向ける俺に、佳梛は、泣きそうなほどに顔を歪めた。
「答えろよ!」
ぐっと掴んだ佳梛の襟元。
佳梛は、反抗するでもなく、ただ悲しそうな瞳を俺に向けていた。
「お前…、俺の……何なんだよ」
放つ声は次第に勢いを失い、雨音に負けていた。
聞いたって、仕方ない。
何と言われたら俺は満足するのだろう。
何を言われたって俺は、満足なんてしないのだろう。
言葉など、真実には、成りはしない。
そんなコト、わかっているのに。
「飽きたのか?」
悲しさに、悔しさに、俺の顔が歪んだ。
佳梛は狼狽えるように、小さく頭を横に振るっていた。
「飽きたなら、飽きたって言えよ! こそこそ、こそこそ…、他のヤツと出来てんならそう言えよ! 俺のコトなんて、捨てりゃあ、いいじゃねぇかっ!」
本当は、捨てられたくないクセに。
本当は、佳梛の傍に居たいクセに。
佳梛の気持ちがなど、無視してでも、傍に居たいクセに……。
ぐっと佳梛に掴まれた俺の手首。
俺は、慌てたように、その手を振り解く。
「腹立つんだよっ!」
ぐっと睨めつけた佳梛の顔は、悲しそうに歪む。
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