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The wing which died surely turns into love
胸に巣食う痛み < Side X
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結芽がバイトに出掛けた後。
俺は、ベッドに座り、テレビを眺めていた。
無意識に、きゅっきゅっと手を握り、開く。
ヤバイな……。
掌を見詰め、握ったり、開いたりを繰り返す。
伸ばす瞬間に、指先から手首にかけ、ビリッと痺れる感覚が伝った。
間違いなく、俺の呪力は、落ちている。
翼の刺青が、二の腕の半分程までに縮んでいた。
完全に、力が衰えている…。
溜まりに溜まった翼からの毒素。
トイレでも何処でも、何度か処理はしているが、追い付いていないのが現状だ。
身体をじりじりと蝕まれる感触が、毒素が溜まってる証拠だった。
結芽を抱きたくても、翼が出てしまうのが怖かった。
何時ものように、記憶を操作してしまえばいい。
でも、次に記憶を弄ったとき、総てが明るみに出てしまうかもしれない。
いっそのこと、総てをバラしてしまえば、いいのだろうか。
衰退したとはいえ、翼はある。
本物を見せれば、納得はするだろう。
でも。
記憶は弄れても、気持ちは変えられない。
もし、俺が″佳梛″ではないとわかってしまったら、きっと、結芽は怒るだろう。
そして、俺など好きになるはずも、ない。
結芽を、壊してしまえばいい。
結芽の前から、姿を消せばいい……。
総てをバラしてしまえば、いい。
選択肢はいくらでもあるのに、結芽を気遣い、二の足を踏む。
違う…。
俺が、結芽の傍を離れたくないんだ。
気づいてしまった自分のこの想いは、掻き消すしかなくなる。
思わず、胸の前で、きゅっと手を握りしめていた。
握り締めた手が、ジリジリとした痛みを放つ。
届かぬ想いは、この痛みと同じように、胸に巣食い、俺を蝕む……。
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