アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
The wing which died surely turns into love
それとこれは、違う
-
抱き締めていた腕を緩めながらも、月香の指先は、俺の翼の痕を柔らかくなぞる。
「俺の意思なんて、関係ないんじゃないのか?」
訝しげに問う俺に、月香は、儚く笑った。
「貴方の意向など無視できる。私が本気を出せば、有無を言わせず、貴方を連れ帰るコトが出来る……」
月香は、俺から身体を離し、自分の手を見詰めた。
「だけど。貴方の望まないコトを強いれるほど、私は強くない……」
泣きそうに歪んだ月香の笑みが、俺を見やる。
どんな言葉を返せばいいのか。
悩む俺の口からは、何の音も出なかった。
視線を游がせる俺に、月香の指先が俺の顎を掴んだ。
するりと寄る月香の顔に、咄嗟に、逃げようとする俺の後頭部が、がっと掴まれる。
「逃げないで下さい。これが一番、手っ取り早いんです」
唇が触れる数ミリ先で、月香の言葉が紡がれる。
結芽とのキスに抵抗がなくなった俺でも、幼馴染みとするそれは、また、別の話だ。
でも、身体の不調は、この溜まった毒素は、自力ではどうにも出来ない。
俺は、甘んじてその行為を、受け入れるしかなかった。
触れる唇が、熱い。
すうっと身体から、何かが抜けていく感覚があった。
重たかった身体が、幾分か楽になる。
「戻った方がいいですよ」
唇を離した月香が紡いだ言葉に、首を傾げた。
ポツリ、ポツリ、雨が降り始めていた。
「貴方の求めている人が、私たちの姿を見ていました」
じっと俺を見詰める月香の瞳の奥に、結芽の姿が映った。
傷ついた顔をした結芽が、ぐっと瞳を瞑り、顔を逸らせ、背を向けた。
はっとする俺に、月香は、困ったように笑う。
「引き離すわけには、行きませんよね……」
私の都合でなんて…と呟く月香に、俺は、既に走り出していた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
37 / 110