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The wing which died surely turns into love
再び弄る記憶
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「飽きたなら、飽きたって言えよ! こそこそ、こそこそ…、他のヤツと出来てんならそう言えよ! 俺のコトなんて、捨てりゃあ、いいじゃねぇかっ!」
言葉を放たない俺に苛立ったように、結芽は声を荒げた。
発するコトができない声の代わりに、身体が動く。
結芽が居なくなってしまいそうで、思わず、その手首をぎゅっと掴んだ。
再び掴んだ結芽の手首は、また、荒く振り払われてしまう。
「腹立つんだよっ!」
キッと俺を睨めつける瞳が、痛い。
刺さるような視線に、俺の胸は引き裂かれ、瞳の奥では、俺と月香のキスに、結芽の心が悲痛を訴える。
痛みから逃げるように瞳を逸らせた結芽は、小さく顔を振るった。
「……お前は、悪くない」
否定するように、ぼそりと声を零した結芽が、言葉を繋ぐ。
「人の気持ちなんて、変わって当たり前だ。お前のコト、責めたい訳じゃねぇ……」
きゅっと閉じられてしまった瞳に、眉根が苦しげに寄せられた。
消したくはない。
力を使いたくはない。
結芽との関係が拗れるのは…、嫌、だけど。
伸ばしかけた手を、ぎゅっと握り込み、衝動を抑え込んだ。
「苛立ってる自分に、腹が立つんだよ……っ」
自分の髪に手を差した結芽の顔は、苦痛に歪む。
「お前のために、俺、頑張ってんのに! どういうコトだよ! くっそ……」
何かを思いついたような、思い出したような顔をした結芽の瞳が、ちらりと俺を見やった。
磨り硝子の向こうへと追いやったはずの本物の佳梛の姿が、記憶の奥で、ちらついていた。
俺は、慌て、佳梛のこめかみへと手を伸ばしていた。
俺が月香と会っている姿を綺麗に消そうとしたが、表面上しか消すことが叶わなかった。
うなじへと手をかけ、俺と月香は、昔からの友人で供に出掛けていたところを目撃した程度に、何とか記憶を書き換えた。
失神した結芽を部屋へと担ぎ入れた。
雨でびしょ濡れになった結芽をベッドへ乗せるのは憚られた。
仕方なく、そのまま浴室へと運ぶ。
貼りついた衣類は、なかなか剥がすのに、手間取った。
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