アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
The wing which died surely turns into love
根負けするのは
-
「結芽に触れれば、記憶を消すコトも、改竄することも出来るだろっ?! お前の力があれば……っ」
怒りに任せ、言葉を放った。
消し去ることは出来ても、生み出すことは、出来ない。
それが、俺の呪力。
多少の改竄は出来ても、一から作り上げることは、出来ないのだ。
「お前なら綺麗に修正できるだろ?」
ぐっと眉根を寄せ睨むように見やる俺に、月香は、呆れ気味に声を放った。
「諦めて、貴方が消えればいいでしょ?」
小馬鹿にするように、放たれる声は、さらに続く。
「ここまで弱れば、解毒する必要もないでしょ?」
捨てるように吐かれた月香の言葉に、胸の奥がズキンと痛む。
腕まで延びていた刺青も、今は、背中に収まるサイズになってしまった。
俺にはもう、どうすることも出来ない……。
「そうしたら、私が、彼の記憶を綺麗にしておきますよ」
結芽の記憶から、俺が消える。
楽しかった、嬉しかった、俺のこの想いも、……。
結芽の中から消えても、俺の中のこの記憶は、想いは、消えたりしない。
結芽の身体を背負い直し、俺は、胸許で拳を、きゅっと握る。
きっと、ずっと、ここが痛いまま。
「……嫌、なんだ」
零すように放った俺の声に、月香は訝しげな瞳を向ける。
「……居たいんだ、俺。結芽の傍に、……居たい」
ちらりと窺うような視線を向ける俺に、月香は、安堵と悔しさが混じった顔をする。
「わかりました」
月香は、諦めたように呟き、結芽のうなじに触れた。
「ん……っ」
深い眠りの中に居るはずの結芽が呻く。
月香は、結芽のうなじから手を離し、軽い溜め息を吐いた。
家に帰りつき、結芽をベッドへと横たえた俺は、しゃがみ込む。
背中が疼く。
身体の中で、ボロボロと翼が朽ちていくのを感じていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
43 / 110