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The wing which died surely turns into love
無言の肯定は、罪悪感へ
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「は……ぁ…………」
自分を守るように両腕で身体を抱いた。
「気持ち悪い…、ですよね」
一緒に家へと上がった月香は、俺の背を緩く擦る。
まるで自分も経験したコトがありそうな言い草だった。
ちらりと横たわる結芽へと視線を向けた月香が口を開いた。
「深すぎて、記憶の底から修正することは、無理でした……」
首を横に振るった月香は、言葉を繋ぐ。
「綺麗に戻したかったのは、山々なのですが…。表面だけ、繕っておきましたが……」
歯切れが悪い月香。
取り合えずの時間稼ぎを、してくれたに過ぎない。
だけど、月香を責めるわけにもいかない。
「悪ぃ…。取り乱した……、ありがとな」
困ったように微笑む俺に、月香は、悔しそうに顔を歪めた。
翼が朽ちる気持ち悪さを経験したコトがありそうな言葉が気にかかり、俺は、荒く月香の腕を引き寄せ、手首まで伸びる袖を肘まで捲り上げた。
普通なら指先まで伸びている刺青が、手首ほどまでで止まっていた。
「私も少し、削られたので……」
手首ほどまでの翼の刺青に触れた月香は、どうしようも無いのだと、眉根を寄せた。
「……罰則で」
ははっと困ったように笑った月香は、隠すように袖を戻した。
「俺の……せい?」
きゅっと寄せた眉根で見やる俺に、月香は、問い掛けの答えを示さない。
その無言は、肯定を意味していた。
「少し、分けましょう……」
月香は、俺に向け、腕を伸ばす。
「いや。もう、お前が、罰を受ける必要ないだろ……」
その腕から逃げるように身体を逸らせた俺に、月香は、ふっと笑みを漏らす。
「今更ですよ」
呆れたように声を放った月香は、逃げる俺を抱き締める。
正面から抱き締められ、優しく擦られる背中に、身体が軽くなる。
「ありがと……。大丈夫だから」
月香の温もりを感じれば感じるほど、罪悪感が生まれる。
月香にも、申し訳なく感じ、結芽にすら悪いコトをしている気がして、ならなかった。
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