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The wing which died surely turns into love
痛みから逸らす視線 < Side Y
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いい加減、真面目に働こうかとスーツで就職活動に、精を出していた。
ハローワークで紹介された先で、嫌味満載な言葉を受けながらも、何社もの面接を受ける。
嫌になってくる日々に、よれよれになった名刺を見つけた。
そこに書かれている″朝羽 佳梛″の名前。
佳梛は、一緒に居るのに。
この名刺は、なんなんだ……。
思いながら、名刺に書かれている住所、ヘアサロンを覗き見た。
店の中では、オレンジ色の髪の男と、ひょろひょろとした男が、談笑していた。
『同じ男を好きんなるとか、ホント意味わかんねぇ』
頭の中に響いた声に、ずしんと重たい痛みが頭を這った。
『だよな』
胸にも走る痛みに、肯定するように放たれた音は、俺の声。
苦笑するように漏れる自分の声に、ズキンズキンと鼓動と供に痛みが広がる。
『しゃーねぇじゃん? 俺の目に叶う相手が居ねぇんだから。同級生なんて、ホント、ガキで、嫌だわ……』
フッと嘲るように笑う……、話しの相手は、佳梛。
いつも一緒に居るからと、あらぬ噂を立てられていた高校時代。
『そういえば、俺の行ってる美容室にさ、めっちゃ綺麗な人、居んだよ。フリーだって言ってたから、なんとかなんねぇかなぁ』
俺の横で、空を見上げる佳梛は、高校時代の姿で。
俺の記憶がフラッシュバックしているのだと感じた。
『なんぼなんでも、無謀だろ』
笑っている俺は、そこに居ない。
俺の心は、傷つきたくないと、瞳を背けていた。
ただ、好きになっただけなのに。
ただ、愛しいと思っただけなのに。
俺の性の矛先が、同じだから。
ただ、それだけなのに、疎外される。
この気持ちは、なんら違わない。
ただ、人を好きになっただけじゃないか。
思ったところで、世間には、認めて貰えない……。
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