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The wing which died surely turns into love
精一杯の空元気
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俺は、思わず手を引き、きゅっと握り締めた。
「悪ぃ……」
罰が悪そうに謝ったのは、結芽だった。
結芽の手が、俺の手首を掴んだ。
そのまま、結芽の頬へと導かれた。
俺の手に擦り寄るように寄せられた顔。
頬を、するりと一撫でした。
小さく頷いた結芽が、声を発した。
「触っていいよ。忘れないように、気合い入れるわ!」
気合いでどうにかなるものでもないのに。
おちゃらけるように紡がれた結芽の言葉に、くすりとした笑みを零した。
何も飾らなくていいのは、楽だ。
何も隠さなくていいのは、楽だ。
でも、俺の翼を見やる結芽の瞳は、痛みを浮かべる。
「痛い……?」
俺の弱り切った翼に視線を据えながら、結芽は、顔を顰め言葉を紡ぐ。
「痛くはないよ。窶れて細くなった感じ。お前らだってダイエットしたって痛くないだろ?」
俺の言葉に、結芽は、瞬間、眉根を寄せたが、直ぐに納得したように、首を小さく縦に振った。
ちょいちょいっと、人差し指で呼ばれた俺は、結芽に身体を近づけた。
ふわふわと揺れる俺の翼に手を掛けた結芽は、顔を寄せ、唇をつけた。
擽ったい……、でも。気持ちいい。
「……もう、無理、なんだ」
俺の言葉に、結芽は、翼から離した顔で、首を傾げた。
「こっちの空気、合わなくて…力が落ちてる」
情けない笑顔を見せる俺に、結芽は、ほっと息を吐いた。
「そっか…。俺的には心配なくなって有りがたいけど……お前、大丈夫なのか?」
不安げな結芽の瞳が俺を見やる。
″朽ちる″
月香の紡いだその言葉が頭の中でリフレインする。
きゅっと瞳を閉じ、頭を振るった。
翼が朽ちたら、俺は、消えるのか……?
……怖い。
でも。
今、直ぐじゃない。
まだ、時間はあるはず……。
「平気だよ」
精一杯の空元気で、笑顔を浮かべる俺に、結芽は、疑わしげな瞳を向けたが、それ以上追求することはなかった。
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