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The wing which died surely turns into love
真っ黒なスーツ姿の男 < Side X
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こんなに早く封印が、緩むはずがない。
翼が、萎れようと、それに合わせてキツくなるのが、本来だ。
月香が、緩く封印したに決まっている……。
両の翼を広げても、飛べる状態ではなかった。
骨と数えられるのではないかという程度の、数枚の羽しかない翼。
「帰る…のか?」
結芽の寂しそうな声が、耳についた。
「無理だよ。こんな翼じゃ飛べないし……」
困り顔で笑い視線を向ける俺に、結芽は、安堵と困惑を綯い交ぜにしたような瞳を向けた。
月香に、呪力を分けてもらえば……、一緒に飛んでもらえば、帰れないコトは、ない。
封印が解けたと言うことは、空へ帰れると言うことだ。
でも、俺は、ここを離れたくはない。
この翼が朽ちたら、俺も朽ちるのだろうか……。
もし、俺が……、俺自体が朽ちてしまうなら、その事を、結芽に黙っているわけにもいかない。
でも、話したくない…、話せない。
どう言葉にしていいのかも、わからない。
どう伝えるべきなのか。
……伝えるべきなのか、否かすら、わからない。
そんな困惑の中にいる俺の耳に、家の鍵が開く音が聞えた。
俺と結芽の視線が、リビングから玄関へと流れた。
そこには、真っ黒なスーツ姿の男……、月香が立っていた。
「お迎えに上がりました」
にこりとした笑みを浮かべる月香に、結芽は、色々なコトが整理できないように、落ち着きを無くし、眉間に皺を寄せた。
「貴方は総てを知っているのですね。彼の名前も、咎人であることも、堕とされたことも……」
ジリジリと詰め寄る月香に気圧されるように、結芽の身体は、動かない。
月香は、ゆっくりとジャケットを脱ぎ、適当に床へと落とした。
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