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The wing which died surely turns into love
俺が最後まで傍に居る
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「翼もない貴方は、特別じゃない。何の呪力も使えない。そんな貴方を愛し続けてくれる保証が、どこにありますか?」
怒りを抑えるように、月香の視線が床へと落ちる。
静かに言葉を放っていた月香の瞳が上がり、刺し殺しそうなほどの鋭さで俺を見やった。
「命を削ってまで、ここに居る意味は、あるんですか?!」
大人しかった月香の声が、荒れた。
部屋全体が揺れるような怒りに満ちた月香の声を制するように、低く静かな声が放たれる。
「特別だから、好きになった訳じゃない」
地を這う低い声で、ぼそりと漏らされた結芽の言葉。
苛立ちをあからさまに、声は続く。
「翼に、その銀色の髪に恋した訳じゃない。特別な力に惚れた訳じゃない。俺は、音里だから、好きなんだ。翼がなくたって、何もできなくったって、音里は音里だっ」
こめかみを押さえる月香の腕に、結芽の指が、食い込んだ。
「俺の愛する人だっ! 一生の恋人だ!」
驚いたように見開かれた月香の瞳。
「音里……。そんなに俺の傍に居たいなら、居ればいい。俺が最後まで見ててやる。どんな壊れ方をしても、どんな朽ち方をしても、俺は、お前を最期までちゃんと看取る」
指の隙間から、結芽の真摯な瞳が、俺を見やる。
諦めの色が、月香の顔に広がった。
ふっと鼻で笑うような音を漏らした月香は、温度の無い冷たい瞳を俺へと向けた。
「翼と呪力の記憶は完全に消します。了承いただけないのなら、強制でも貴方を連れ帰らなければ、なりません」
ちらりと結芽へと向けられる月香の視線は、彼の記憶を消すことの了承を俺に求めていた。
「記憶は弄れても、気持ちは変えられない。貴方だって、わかっていますよね? 貴方が今、愛されているのなら、彼の気持ちが変わることは、無いはずです」
消しても問題は、無いでしょう…と、無言で威圧気味に、問われていた。
「そうだな」
俺は、肯定の意を放ち、月香の手を取り、自分の額へと導いた。
「俺の記憶も消すんだろ?」
申し訳程度の笑みを見せる俺に、月香は、反射的に俺の手を振り解いた。
「本来ならば、貴方の記憶も消します……。でも」
冷たい怒りのような温度を孕む月香の瞳が俺を見やり、言葉が繋がれた。
「貴方の記憶は、消しません」
ふっと嘲るように笑った月香は、嫌味のような言葉を足した。
「一生、戻れないあの地に、焦がれればいい」
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