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The wing which died surely turns into love
朽ちた翼は、愛へと変わる
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月香が去ってから、数日しか経っていなかった。
俺の背から、刺青は綺麗に消えていた。
逆に、鎖骨の刺青は、色を増した。
髪は、光を失った銀色が黒に侵食されたように、暗い灰色で落ち着いた。
不意に、結芽が口を開いた。
「夢見た」
寝起きで、ベッドに座り、上半身を起こした結芽は、頭をがしがしと掻きながら、ぼそりと声を放った。
「どんな?」
俺は、ベッドにうつ伏せながら、視線だけを結芽へと向けた。
「お前が天使だった。背中に羽あんの」
結芽は、自分の右側の背を指し示す。
「…でも、片方しかなくて」
結芽は、不思議そうに首を傾げた。
「変な夢」
声を放ち、俺は、くすくすと笑って見せた。
「だな…。でも、お前がさ、帰れば……」
言いながら、結芽は、天井を指す。
それは、空へと帰るコトを表しているのだろう。
「死ななくて済むのに、俺の居ない世界は嫌だって…ははっ」
結芽は、はにかむように嬉しそうに、笑い声を零した。
「なんか感動~」
言葉と共に、結芽は、うつ伏せていた俺の背に乗ってくる。
「重いよ……」
俺の言葉など、聞こえていないかのように、結芽の唇が、灰色の髪に口づけを落とした。
がばっと身体を起こした結芽は、胸元のネックレスを摘まみ上げた。
「こんなん持ってるからそんな夢見たのかもな…」
胸元に光る銀色のネックレスが、光を受け、キラキラと瞬いた。
夢じゃないよ。……言えないけど。
翼は朽ちて消えたけど、結芽に対する想いは、どんどんと膨らんで。
結芽の空にまつわる記憶は消されてしまったのに、結芽との想い出は、増えていく。
消えることない記憶と、傍で笑う結芽の顔。
死ぬまで共に歩んで生きたい。
この命が尽きるまで、想いは消えずに、膨らみ続ける。
朽ちた翼は、愛へと変わる……。
― E N D ―
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