アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
The wing which died surely turns into love
結ばれる縁 < Side Y
-
音里と供に出掛けている時に、再会した佳梛。
佳梛を、憎らしいと思ったコトなど、なかった。
腹立たしいと思ったコトも、ない。
どちらかというと、心配の方が大きかった。
再会できて、良かったとすら思っていた。
俺が一歩を踏み出せば、再び、佳梛との縁は結ばれる。
それは、恋人みたいな恋愛感情の伴うものじゃない。
それでも、俺は、佳梛と繋がっていたかった。
俺は、髪を切ると言う口実で、佳梛の働く美容院を訪れた。
佳梛は、嬉しそうに俺を店へと招き入れた。
鏡の前の椅子へと座らされ、真っ黒なケープを掛けられる。
「相変わらず、いい髪してるよなぁ」
佳梛の指先が、伸びかけの俺の髪を摘まむ。
「んー、そぉ?」
鏡越しに佳梛を見やり、緩く声を放つ俺に、嬉しそうな笑みが返る。
「柔らかいけど、ハリあるし……、クセが少し強いけど」
くすくすと笑いながら、俺の髪へと手櫛を通した佳梛は、言葉を繋ぐ。
「で。どうするの? 切るの?」
「あぁ、うん。揃える程度で……」
オッケーと軽快に声を放った佳梛は、一旦、俺の傍から離れていった。
髪を切ることは口実でしかなかった。
でも、俺は、過去蒸し返す勇気も、ない。
洗髪で濡らされた俺の髪が、シャキシャキと小気味いい音と供に、整えられていく。
「結芽の髪、切れるとは思わなかったなぁ」
佳梛は、嬉しそうに口角を上げ、俺の髪に鋏を入れる。
粗方、切り終えた頃。
「なあちゃん」
佳梛の後ろから、共同経営者である男が、不機嫌そうな声を放った。
佳梛は、まるで聞こえていないかのように、俺の髪を切り揃え続ける。
「なあちゃんってばっ」
鋏が離れた瞬間に、男の手が、佳梛の手を捕まえた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
72 / 110