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The wing which died surely turns into love
遙夢の来訪 < Side X
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俺の名は、月雨 音里(つきさめ おんり)となった。
こちらで住まうようになりすぐの頃、俺の元に来たのは、遙夢(はるむ)という管理者だった。
月香の階級が、咎人を監視・管理できる″監視者″という立場。
遙夢の階級は、そんな″監視者″を監視・管理できる″管理者″だ。
監視者や咎人たちを、総括的に監督する立場の者。
オニキスのような漆黒の髪と、深い海のような青い瞳。
一重の切れ長の目と、薄い唇。
あまり表情を表に出さないコトが、冷たい印象を与える人物だった。
遙夢から差し出された通帳。
「貴方が暮らしていくに困らないお金です。貴方の戸籍、一つくらい、俺にかかれば造作ない」
俺の名前の前には、″月雨″の文字が書かれていた。
じっとその文字を見やる俺に、遙夢は、言葉を繋いだ。
「貴方の名は、月雨 音里。こちらでは、苗字がつくものなのです。彼…猪野 結芽…でしたっけ? と同じ苗字にしようかとも考えたのですが、こちらでは、同姓の結婚は許されていない上に、彼の記憶は極力、弄りたくはないのでしょう? となると、貴方の監視者であった月香と秋雨(あきさめ)からつけるのが妥当かと……」
つらつらと事務的にも思える口調で話す遙夢。
″監視者であった″?
「……月香、は?」
俺の言葉にも、遙夢は、一切の感情を顔には出さない。
「俺の管理下に居ますよ。生きてます……」
1歩、俺へと距離を詰めた遙夢は、俺の左の鎖骨…羽模様の刺青に触れる。
じわっと焼かれるような熱さが、刺青から広がった。
思わず後退り、刺青を押さえた。
「貴方は、月香に葬られたコトになっています」
驚きの瞳を向ける俺に、遙夢は、小さく声を零す。
「たとえ、咎人だとしても勝手に葬るコトは、重罪に当たります……」
だから、月香は俺の管理下に、"咎人"として居るのだと、暗に示した。
「しっかりと、隠れていてくださいね。決して見つからないように……」
細い瞳をさらに細め、俺を睨むような視線を向けた遙夢は、踵を返す。
翼を大きく開き、空へと飛び立っていった。
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