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The wing which died surely turns into love
不必要な約束
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遙夢は、くっと小さく奥歯を噛み締め、苛立ちを逃がす。
「秋雨の力があれば、そのうち…貴方の呪力が弱ってしまったら、見つけられてしまうかもしれない」
独り言のように呟かれる遙夢の声。
1人に対する呪力…記憶操作は、確実に深くかけてしまえば、自身が弱っても、緩むコトはない。
でも、隠すという能力は、複数人に対する呪力であり、自分が弱れば、薄れてしまう。
かけてしまえば終わり、というものではない……。
慌てたように顔を上げる私に、遙夢は、したり顔を向けた。
「彼の戸籍、生活していくための財産、諸々を俺が準備しましょう。ついでに、貴方のかけた呪縛を強化して来ます。その代わり……」
遙夢の視線は、殺しそうなほどに鋭く、私に刺さる。
「月香。秋雨に、音里の居場所を話さないと約束して下さい」
遙夢の人差し指が、俺の唇に押し当てられた。
内緒にするようにと、唇に縦1本の線を引く。
「見つからなければ、そのうち、秋雨も飽きるでしょう。……いつか」
ふわりと離れた遙夢の手は、私の長い金髪を弄び、落ちていく。
音里に執着する秋雨が嫌で仕方ない遙夢は、微かに眉を寄せる。
大きく感情を見せない遙夢。
腹立たしさも、嫌悪も、小さく眉を寄せるコトで、消化する。
「もちろんですよ。……音里を危険にさらすようなコトを、私がするわけないじゃないですか」
当たり前だと言葉を紡ぐ私に、遙夢は、ふふっと、満足そうな声を零した。
「あくまで、しら切るんだ」
ふ~んと詰まらなそうな音を漏らした秋雨は、チッと小さく舌を鳴らし、私の前から去って行った。
貴方が心配だから、私は貴方を堕とすことを選んだ。
憎いからとか、嫌いだからとか、そんな否定的な理由じゃない。
本当の、心の底の本心を言ってしまえば、……好きだから。
色んな女にいいようにされている貴方が、嫌だった…。
結果……、貴方の幸せを手助けできた。
私との幸せではないけど、これで良かったんだと、自分の心を納得させた。
貴方の記憶を、消そうとした。
でも、達観したような表情と微かに上がる口角に、苛立ちが胸に降る。
それは、自分ではない者との未来への期待だったから。
私は貴方を守りたいからこそ努力をして力をつけた。
自分自身のためだけなら、こんな苦労はしなかった。
しようとも思わなかった。
別に抱き締めなければ、翼を修復できない訳じゃない。
キスをしなければ、毒素を抜けない訳じゃない。
翼の付根や、刺青に触れればいいだけだった。
そう、ただ…私が触れたかった、…抱き締め、キスをしたかっただけ。
本当なら、翼の衰退と共に、あちらの記憶は消えるもの。
でも…。
忘れないコトが貴方の贖罪。
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