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The wing which died surely turns into love
憎まれるべきは、オレ < Side H
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暗い牢獄の中。
片足を投げ出すように、壁に背を預け、座る月香は、総てを諦めたような顔をする。
「月香」
牢獄の檻に指をかけ、名を呼ぶオレに、月香は一瞥をくれただけで、視線を外した。
「オレ……、待ってるよ」
「陽静(ひせい)。ここには来るなと言ったはずです。待つな、とも……」
小さな窓から降りおりる月光に、月香の瞳がキラリと光る。
「私は咎人ですよ……」
諦めたように頬笑む月香。
でもそれは、父…、音里を護るためにしたコトなのだろう。
誰かを傷つけた訳じゃない。
誰かを哀しませた訳じゃない。
否。
……音里は、傷ついたかもしれない。
……音里が帰ってこないと知って、俺は、少しだけ哀しかった。
微かに歪んだオレの表情に、月香は、追撃するように言葉を繋ぐ。
「貴方の父を堕としたのも、帰らぬ者にしたのも、私ですよ」
拒絶の色を浮かべた月香の瞳が、オレを見やり、言葉を繋いだ。
「貴方は、私を憎むべきです」
するりと外された視線は、困惑を露呈するように、ちらちらと蠢いた。
本当は、嬉しいクセに。
強がって、オレを遠ざけようとする。
「憎めないよ。オレが仕組んだことにしたいくらいなのに」
一瞬、見開いた月香の瞳は、苛立ちのままにオレを向けられる。
「教唆だっけ? そうすれば、オレも、ここに入れるでしょ?」
ニタッと笑うオレに、月香の顔は、嫌悪に歪む。
「貴方は……っ」
月香が叱る際に発する言葉と声。
立ち上がり、オレに寄った月香は、阻むように立ちはだかる牢獄の檻を殴りつけた。
憎まれるべきは、オレの方。
父に似た姿に、月香の罪の思いが蘇る。
わかっているけど、オレは、月香の傍に居たい……。
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