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The wing which died surely turns into love
泥沼に沈む心 < Side G
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陽静の手は、まるで壊れ物でも触るかのように、小動物でも愛でるかのように、余すところなく、私の身体を滑っていく。
触れられたところから、じんわりと熱を帯び、与えられた温もりは余韻を残し、ちりちりと肌が粟立つ。
音里の手は、こんな風に触れるのか。
音里の身体は、こんな風に乱れるのか。
有りもしない音里の姿を、陽静の中に探していた。
事実。目の前に居るのは、陽静なのに。
私を抱いて居るのは、音里ではなく、陽静なのに。
好きでもない相手。
ただ、容姿が似ているだけの子供。
そんな相手にすら、私の身体は、容易く反応するのだ。
見境のない、だらしない自分に嫌悪さえ湧く。
口許を手の甲で隠し、視線を逸らせ、早く終わることを願う。
……願ったところで、それが終わるのは、まだまだ先で。
瞳を閉じてしまえば、手の感触だけが、余計に浸透して、気持ち良さに嘆く。
どうして、私は、叶いもしない恋に落ちたのかと、後悔の想いが胸を侵食していく。
「月香……」
少しだけ音里とは違う声色に、夢想の縁から目を覚ます。
ほんの少しの実感。
微かな冷静さが、頭の片隅から覗き込んでくる。
羞恥と快感が混ざり合い、平常心が削ぎ落とされていく。
拒むことの出来ない行為と、溺れることの出来ない感情。
沈んでしまえれば、楽なのに。
なにも考えず、ただ感じる気持ち良さに、沈んでしまえれば楽なのに。
心のどこかで、罪悪感が主張する。
陽静を代わりにして、心を満たそうとしている自分が嫌になる。
陽静の優しさに甘えている自分に、腹が立つ。
「考えないでよ」
ぼつりと呟かれる陽静の声。
「なにも悩まなくていいよ。月香は、何も悪くないんだから……」
柔らかく何度も身体に落とされる唇に、理性を手放してしまいたくなる。
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